■クロノス大祭『二人の思い出に』
シリウスとメルヴィの久しぶりのデートは、クロノス大祭の日。金色の砂と真っ白な雪が混ざり合いながら降り注ぐこの日、巨大時計から現れた人形たちの奏でる美しい音楽と共に、人々が陽気に飲んで騒いで歌って踊るのがこのお祭り。
ふたりで街へと繰り出し、祭で賑わうラッドシティの街中を歩いていく。
いつも忙しくて一緒にいられないから、こういう時くらい男らしくエスコートしてあげないと、とシリウスはメルヴィに寄り添う。
メルヴィはというと、そんなシリウスのエスコートに導かれてドキドキな様子。そして、雪の降る町をふたりでゆっくり話しながら歩くのも楽しいなぁ、と周りの雰囲気にもつられて思わず笑顔になってしまう。
ふと見つけた雑貨屋の店先に置かれた、星霊クロノスの人形を飾った小さなツリーを見つけたメルヴィ。雑貨屋に駆け寄りしゃがみ込んでツリーを指差すと、追い付いてきたシリウスの服の袖をくいくいと引っ張って、ちょっぴりはしゃいだようにシリウスを振り向いた。
「あれ、可愛いー!」
無邪気に喜んで笑うメルヴィが可愛くて、シリウスは思わずふっと微笑みがこぼれてしまう。
そんなシリウスの様子を見て、ちょっと子供っぽかったかもしれない、とおとなしくなってしまったメルヴィ。
「メルヴィの方が可愛いよ」
そんなメルヴィを見て、シリウスはついぽろっと言ってしまう。シリウスの突然の甘い言葉に、驚いたメルヴィの顔は真っ赤に染まる。そしてすぐに嬉しそうにはにかんだメルヴィの顔がまた可愛くて、笑顔で先程の台詞を口にしたシリウスもつい照れてしまうのだった。
「ひとつ、買っていこうか」
今日という日の思い出として、ふたりで一緒に居られた記念にツリーを買って。
ツリーの入った袋をふたりで提げて、また雪の舞い落ちてくる賑やかな道をゆっくり歩き出す。
メルヴィはシリウスを見上げ、これからもずっと一緒にいたいね、と声には出さずに思うのだった。