■クロノス大祭『Tempo Oro』
雪が舞い、吐く息は踊り、熱い胸は高鳴る。街角には煌びやかな飾り付けが光を反射して輝きを増し、見詰める瞳もきらきらと。
今日はクロノス大祭、寒いけれど色々巡り歩いて疲れたから、とキールとリテラはオープンカフェに落ち着いた。
何かとイベントごとに一緒に楽しんで過ごす二人だから、この日も勿論一緒に過ごしていた。
せっかくだから事前に調べておいたので、選んだカフェは街並みが眺められるし夜景も堪能出来る。良い場所だ。
「さて」
席に落ち着いたら、オーダーが来るまでの間のお楽しみ。
それはキールもリテラも同じで、二人は今日の為に用意して大事に持ち歩いていた包みを取り出す。
お互いがお互いの為を思って心を込めて用意したプレゼントを交換するのは何と胸躍ることだろう。
「日頃お世話になっているからね。ハッピークロノス」
差し出したプレゼントは、感謝を込めて。
「こちらこそお世話になっているんだよっ、ハッピークロノス、だよ〜」
いつも何かとお世話になっているからと準備してきたのだが、それはリテラだけではなくキールも同じ考えだったようだ。
そして、気に入って貰えるといいなと思うのも同じで。
リテラが貰ったプレゼントは、天使の羽根をモチーフにした意匠を持つポーチ。
それを見た金の瞳がまあるく見開かれて、瞬時に微笑に変わった。
「ふふっ、なんだかとても嬉しいんだよっ」
ほっとキールの表情も緩む。
キールが受け取った包みを開ければ、それは今日の服装にとても似合いそうな上品な光沢を持つ布地を使った黒いネクタイ。
にこにこしていたリテラが、ぽんと手を打つ。
「リテラ君?」
いいことを思いついた、とリテラはキール方へ手を伸ばし、あっという間にプレゼントしたネクタイを取って席を立った。
「せっかくだしプレゼントのネクタイを締めてあげよう♪」
「えっ」
提案するなり即行動のリテラの言動はキールは予測済みで、彼女のするに任せてみる。
やっぱり、少し恥ずかしかったけれど、滑りの良い布地で器用にノットを作り通していくのをじっと見守る。
「……ありがとう。似合うかな?」
「うん、とっても似合ってるんだよっ」
キールの赤い瞳の色が頬にも移ったよう。
男性から女性にアクセサリーをつけてあげるのが定番だけれど、こういうのもいいだろう。
互いを思い過ごす楽しい時間は値千金。
何ものにも代え難いのだから。
緑の髪に大きなリボンをつけたリテラに、ポーチはよく似合ったし、キールが締めてもらったネクタイも、まるで誂えたかのようにしっくりきている。
そうこうしているうちに飲み物が運ばれてきた。
お酒ではないけれど、と二人は微笑みながら見詰め合って乾杯したのだった。