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2人でクロノス大祭

ペット・ニョロ
堅牢の剣・イリア

■クロノス大祭『寒いですか?』『うん、ちょっと寒いかなー』

 星が瞬くと同時に金色の砂と真っ白な雪が空を舞って、それらがキラキラと輝くと、夜という時間を忘れさせてくれる。そして街を包み込んでいる楽しげな音楽に笑い声は、心を温かくしてくれて、人々に笑顔をもたらしていた。
 ずっと見ていても飽きない辺りの綺麗な景色を眺めながら、ゆっくりと、イリアは隣を歩くニョロのペースに合わせ足を進める。対してニョロは、景色に視線を向けることはなく、うつむいてイリアの方へと手を出したり引っ込めたりしていた。
 ――手をつないで歩きたい――。
 そう思っているのに、伸ばした手は空気だけをつかむ。
 恋人という関係ではないのに、手をつないで歩く……それは変だろうか。頭に浮かんだ疑問が、勇気というエネルギーをどんどんと減らしていて、ニョロはイリアの手をつかめずにいるのだ。

(「手をつないで、それをきっかけに恋人同士に……なんてのも悪くないかな。あ……でも、これだけでそんな関係にはならないよね!」)

 考え1つで気持ちは上がったり下がったり。そして、いろいろと考えているその間も、ニョロは手を伸ばしたり引っ込めたり。心臓をずっとドキドキさせたまま、時間だけが過ぎていく。
 けれどそんな少し寂しい時間は、イリアがニョロのソワソワとした様子に気づいた事で終わりをむかえた。もう一度……と、頑張って伸ばしたニョロ手は引っ込むことなく、イリアにぎゅっと優しく握られる。
「寒いですか?」
「うん、ちょっと寒いかなーって」
 本当は違うけれど、手をつなげたのだからこれでいいや。そう思い、柔らかい表情で問うてくるイリアに、ニョロはうつむいていた顔を上げて笑ってみせた。
「じゃあ今日はずっと握っていますね」
 微笑み返してくれた彼と視線を合わせると、ほんのりと心が温かい。
 手をつなぎたい思いで全然見ていなかった空も、降り注いでくる金砂も雪も、今なら素直に楽しめる気がする。

「空、綺麗だね」
「そうですね」

 これからもずっと、手をつないで歩きたい。
 だから……明日も、明後日も、ずっと寒ければいいのにな。
イラストレーター名:東原史真