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2人でリヴァイアサン大祭

陽だまり農婦・アリス
聖者の右手・キリク

■リヴァイアサン大祭2012『傷だらけのトナカイたち』

 今日は年に一度のリヴァイアサン大祭。プレゼントを貰った子供達が、雪原を元気に走り回っている姿もちらほら。
 ――そんな楽しげな子供達の中にも悲劇は起こっていたのだ。
「やめてくれよ!」
「うるさい! プレゼントは俺のものだ」
 古代から続く社会の暗黒面。いつの時代も存在するいじめっ子といじめられっ子。そんな悲劇。いじめられっ子には悲劇であるが、いじめっ子からすれば幼い愛情表現だったりするのだが。
 いじめられっ子が抱えて握り締めているプレゼントに手が伸ばされようとした瞬間、
「「待て!」」
 ――ドーン!
 2つの声が同時に響いた途端、爆発が起きた。――雪原には爆発するような物は何もないにも関わらず。
 驚いた2人は動きを止めてそちらを見る。そこには突然の爆発を背景に立つ2つの影があった。
「誰だ?!」
 いじめっ子は突然現われた影に向かって声を上げた。気の弱いいじめられっ子は唖然としている。
「私はアリス。わるいことはトナカイゆるさない」
「私はキリク! サンタさんに変わって折檻よ!」
 名乗る2人の頭にはトナカイの角。アリスと名乗った方は、胸元を大きく露出させたセクシーな赤いレオタードの美女。キリクと名乗った方は、茶色のドレスで胸元に茶色の毛皮がもっさりな――胸元が平らで露出した腕も逞しい、野太い声の美女。
「……いやマジで誰だ!?」
 いじめっ子の叫びはもっともだ。この雪原に寒そうな格好で怪しいにも程がある。
「トナカイだ」
「愛を運ぶぞ」
 アリスが胸を張って答えると、キリクがウィンクで投げキッス。
 2人のトナカイが合体ポーズを取ると、眩い光が溢れる。「まぶしっ!」と顔を覆う子供達。
 しばらくして光がおさまると、いじめられっ子は驚きに目を丸くした。
 さっきまでいじめっ子がいたはずの場所に、可愛らしい女の子が立っていたのだ!
「?!」
 さりげなく出された鏡に映る姿に戸惑ういじめっ子――の少女。薄汚れた少年な姿をしていた彼女が、何故一瞬にして可愛い女の子に!?
「君って、こんなに可愛かったんだ」
「そ、その……」
 2人の間の空気が変わっていく。やがていじめられっ子の少年は、少女の肩を抱きしめて叫んだ。
「あっありがとう!」
「トナカイ、コトバ、ワカラナイ」
 その子供達の様子をニヤニヤ、いや微笑ましく眺める2人のトナカイ。背中に何か隠し持っているようだ。 
 ――トスン。
 何かが雪の上に落ちる音がした。トナカイ達がこっそり落としたのである。
「デモ、カンシャ、ワカル。トモダチ」
 トナカイ達は、ニッと笑って自由になった手で、トモダチのポーズを送って去っていった。
 後に残されたのは、すっかり可愛らしくなったいじめっ子と、少しだけ逞しくなったいじめられっ子。
 ――そして雪の上に落とされたまま取り残された櫛や化粧品。

 メリーリヴァイアサン……彼らは愛を運ぶさすらいの野獣……。
「「シーユーアゲイン……!」」
イラストレーター名:カス