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2人でリヴァイアサン大祭

血華舞踏・エシラ
ギヤマンリッパー・アカシ

■リヴァイアサン大祭2012『翌夜の語らい』

 その夜、エシラとアカシの二人は、ファビウス領領主、アカシ本邸寝室にいた。菓子や酒が広げられたテーブル、置かれたキャンドルと暖炉の仄かな明かりの下、で女子二人の楽しそうな声が響く。
 ここでは二人は本来の名前で呼び合う。エシラはアリス、アカシはアカーシャ。
「だから、何も無かった、と言っているでしょう?」
 そう言う桃色の髪の女の顔……アリスは、酒の所為か否か――仄明かりの元でも、赤いのが見て判る。
「あら、それならば何故、そんなに言いにくそうなのかしら?」
 もうひとりの暁の髪の女……アカーシャは、酷く楽しげに笑い、殊更その顔を染めんとするように酒の器に更に酒を注いでいく。
「……別に、大して特筆すべき事態のない、それはそれは平和な一日だったからよ」
「なら、アリス、その平和の内容を教えて頂けない? 他愛のない会話というのも、聞いていて和ましいものなのよ」
 元より全てが顔に出てしまう手前、隠し事が苦手なアリスの方がこの駆け引き、明らかに劣勢だ。
 そんな様子を見て取っていように、片や敢えて問う意地の悪さを覗かせるアカーシャ。戯れの様に内容を尋ねては、薄紅の髪にめり込ませようとする様に、拳を添えた。
「うーりうり、ほら白状してしまいなさいな」
「い、一緒のベッドで寝たわ、ただそれだけよ!」
「へぇ、一緒に寝たの。ふふ、仲の良い事」
「……あ」
 この光景を見ている者がいればあきれ返るか、思わず笑ってしまいそうなほどあっけなく詰んだ。
「へぇ、一緒に。へぇ、一晩中、ねぇ」
 にやにやと楽しげに笑うアカーシャ。もう言い逃れさせないわよ、と言う様な楽しげな目。
 アリスはこの幼馴染がやっぱり苦手かもしれないと今更ながらに思う。しかし、それでもなかなかどうして憎めない。
「教えられる訳ないでしょう! アカーシャの意地悪ッ!」
 子供のようにムキになって怒ってみせるアリス。
 年に一度、リヴァイアサン大祭の長い夜は童心に帰る様な気分のまま穏やかに、暖かい時間として過ぎていった――。
イラストレーター名:いちのせかいん