■リヴァイアサン大祭2012『特別な日に、いつもと同じ二人で。』
リヴァイアサン大祭に賑わう街を歩き、サフラノは信頼する親友のためのプレゼント選びに色々な店を覗いて回っていた。一年に一度の特別な日だ。
それも親友のためとなれば気合いが入る。
彼女は何が好きか。どんなものが気に入るか。喜んでくれるか。
「キィコさん、なにが欲しいかなー」
きらびやかなアクセサリーを扱う店に入ったとき、それはまるで天啓のようにサフラノに訪れた。
「ん、これ……」
手に取ってみて、サフラノは確信し、ぱぁっと笑顔が広がった。
これしか無い。もう、これしか無いに決まってる。
喜び勇んでそれを購入し、待ち合わせ場所に急ぐ。
一方のキーコも昼の内から買い物に出ていた。
「アレ、サフィーに似合うと思っていたのよね」
実のところ、キーコは以前から決めていたのだ。親友に贈るにふさわしいと目を付けたものがある店に一直線、目的のものを迷わず購入し、空いた時間を利用して街の様子を楽しみながら歩く。
「少し早くつきそう……まぁ、待つのも楽しみね」
待ち合わせ場所の店のテラス席に着き、キーコは待った。
やがて待ち人が息を切らせて駆け込んでくる。白い息がふわりと雪を舞わせる寒さだった。
「ごめんっ、お待たせ!」
「全く、いつまで私を待たせる気?」
いつものように上から目線で振り返り、そう告げるが本気で怒っているわけではない。
ともかく、特別な日に乾杯だ。
杯を合わせ、互いに選んだプレゼント交換。
キーコからサフラノへ贈られたのは、金の鎖にオレンジの宝石が飾られたブレスレット。元気が出る色合いは明るく前向きで男のように振舞うサフラノにとても似合う。
「うおお、めっちゃキレイ! ありがとーな」
それでも女子だ。感動してその場で腕につけた。
「私の目に間違いは無かったわね」
キーコはその様子に微笑んで、サフラノからのプレゼントを開けた。
サフラノからキーコに贈られたのは、青を基調としたチョーカーで、薔薇のモチーフとリボン、金鎖で装飾されている。藍色の瞳に長い黒髪の美女であるキーコによく映えるだろう。
「綺麗……ありがとう、嬉しいわ」
サフラノと同じようにすぐ身に着ければ、彼女も嬉しそうだ。
「イメージ通り! 似合ってるなー」
信頼し合い、互いを知るからこそ唯一無二の贈り物が出来た。
二人とも上機嫌で酒を重ね、談笑するのは楽しかった。
そんな中、肩を露出させた服のキーコへ、サフラノは冗談めかしてショールを掛けてやった。
「こちらをどうぞ、女王サマ?」
「あら、気が利くじゃない?」
くすくすと笑い合い、そんな風にいつも通りの二人の特別な夜は更けていった。