■リヴァイアサン大祭2012『寄り添う黒と白』
今日は年に一度のリヴァイアサン大祭。空には雪が舞い踊り、小川には甘い蜜が流れる特別な日。
だからだろうか。夜空で光る月や星は、いつもよりも明るく輝いて広い夜空を彩っている。
そんな夜空の下でベンチに座って湖を眺めて、ヴァゼルは小さく笑って白い息をはいた。
(「……やっぱり寒いかな」)
夜空を写し取ったような湖は幻想的な空気を纏っていて、いつまでも見つめていたくなるけれど……。
ただでさえ冷たい湖の空気は、冬の夜ともなれば冷気を帯びて肌を刺してくる。
けれど、今日はその寒さも、いつもより少し和らいだように感じる。
それはきっと、隣にいるミモザのおかげだろう。
一緒のベンチに腰掛けて、同じ湖を見つめているミモザに、ヴァゼルはそっと視線を向け――。
(「……あ……」)
それよりも少しだけ先に、腕に感じた暖かさに息を呑む。
顔を向ければ、すぐ傍にミモザの柔らかな笑顔。
その笑顔と温もりに、少し高まった鼓動を隠しつつヴァゼルも同じようにミモザに寄り添って……。
そして、徐々にヴァゼルの顔はミモザの顔に近付いてゆく。
いつも見慣れたミモザの笑顔。
でも、今彼女の顔を眺めていると、自分の中の何かが我慢できなくなる。
だから、ヴァゼルは自分の中にあった思いを取り出して、ミモザへと渡す。
「……これほど嬉しい日は初めてだぜ、ミモザ……愛してるよ、誰よりも」
ヴァゼルの言葉に、ミモザも目を閉じて答えて――。
夜空の星と湖が見守る中で、二人の影は重なり合うのだった。
そのままどれだけ経っただろうか。
そっとミモザから離れると、ヴァゼルはミモザを見つめて手を差し出す。
「さて、これ以上いたら風邪ひくぜ。帰ろうかミモザ……」
腕の中から離れてゆくぬくもりは惜しいけれど……。
だからこそ大切にしたいし、もっと一緒にいたいと思うから。
「今夜は一緒にいたいな、キスより凄い事、しようじゃないか」
そう、若干の照れが混ざった笑みを浮かべて、ヴァゼルはミモザの手をとると歩き始める。
頬は赤くなって熱を持ち、胸の鼓動もいつもより早くなっていて。
いつものように、人をからかっている時のようなクスクスとした笑みを浮かべて喋ろうとしても、言葉も歩みも、なんだかぎこちなかったけれど……。
それでも、優しい笑顔は浮かべたままで。
月の光が照らす道を、ヴァゼルはミモザと2人で歩いてゆくのだった。