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2人でリヴァイアサン大祭

虚構のレセフェール・リーベル
森牙・イルヤナ

■リヴァイアサン大祭2012『白き世界の片隅で―。』

「冬は眠りの季節だ。森に息づく命達は春が廻るまで、皆等しく眠りにつく。だからこそ森には、番人が居なきゃならん。――……雪が解け、春の音が聞こえる頃に。また逢おう」
 そう言って、自身の住まう森へと帰って行くイルヤナをリーベルが見送ったのは、数ヶ月前の出来事だった。
 一度決めた事は最後まで貫き通す、イルヤナはそんな強い信念を持つ人だ。そう知っていたから、期待はしていなかったのだけれど。
「……まさか、来てくれるとは思わなかったよ」
 リーベルは小さな声で言った。
 隣で空を仰ぎ見るイルヤナへと伝えたリーベルの言葉とその声は、どこか弱々しい。
 2人の上に広がる夜空には、美しい純白の雪が舞っている。
 今日は年に一度の雪の大祭。誰もが大切な人と過ごす事を望み、夢見る、特別な一日だ。
『出来るならば君と共に、白に彩られた美しい世界を見てみたい』
 そう、心の思うままに文を綴ったのはリーベルの方だった。
 しかし手紙を出したのは、慌ただしくも祭の前日。
 いくら何でも性急すぎるし断られるだろうと考えていたのに、結果は……この通りの状況というわけで。
 本来なら、彼と再会するのは花々が咲き、暖かな春風の吹く頃だっただろう。でもイルヤナは手紙に応え、リーベルの元へと駆けつけてくれた。
 リーベルはちらりとイルヤナを見る。
 共にリヴァイアサン大祭を過ごせる事は、とても嬉しい。
 けれど勝手が過ぎた自分に彼が呆れていないだろうかと、リーベルの心には幾ばくかの不安が宿る。
 そんな不安を拭い去るかのように、イルヤナはリーベルの肩を優しく引き寄せた。
「……湿気た顔してんな。久々の再会なんだ。お前の笑顔、見せてくれよ」
 な? と促すように、柔らかに微笑むイルヤナの顔に嘘偽りはない。
 その表情が、彼もリーベルに会いたかったのだと伝えていて。
「……全く。君には、かなわないな」
 そんなイルヤナの優しさに、自然とリーベルの頬は緩み、ほころんだ。
 触れた部分から、互いの体温が伝わり合う。
 冷たく澄んだ空気の中、吐く息は白い。けれど2人でいれば、心はふわりと温かい。
 美しく、優しい白に包まれた景色。空から降る結晶はキラキラと光り輝いていた。
 大切な人と共に過ごし、絆を再確認するというリヴァイアサン大祭。想い願う事は多けれど、今はただ、白き世界で2人きり。
 イルヤナとリーベルは、顔を見合わせて笑う。
 さあ、共にこの雪舞う一夜を楽しもう。
イラストレーター名:hatsuji