■リヴァイアサン大祭2012『Shared joy is a double joy』
空に泳ぐ星霊リヴァイアサン、舞い躍る白い雪。アマツカグラ風の宿で木枠の窓から見上げていたよりもそれは儚く、けれど不思議な力を感じる。
肌が引き締まるような寒さの中、足許から強張りを溶かすような温かさにほっと息を吐いたのは、隣の『夫』も、同じだったようで。
「足冷えてたから助かるな……足湯なんてよ」
「本当だねーあったかい〜。ぬっくぬく!」
宿の部屋から空を眺めていたロイを、ガルソが連れ出した。特別な日に、アマツカグラ風の衣装を纏って町を練り歩く──そんなデートも悪くないだろうと。
互い、何度か袖を通したことのある形のものだ。
けれど足許は冬の風から守ってくれるブーツはなく、下駄。歩けば裾が躍って素足を冷やした。
そんな折──泉の全てが温泉に変わるこの日、そこから引いてきたらしい足湯を見付ければ入るのはきっと実に、当然の流れ。
流水に龍の柄の着物をたくし上げて、ぱしゃりと他にひとの居ない湯の表面を蹴り上げる。そんなガルソを、ただ眺めるロイに、気付かないガルソではない。
「ロイも離れてないで、こっち来いよ?」
言えば、ぱ、と瞬時綻ぶ相手の顔。でもすぐ、躊躇うような窺うような、上目遣いが寄越される。
「ん……どうせなら、手も繋いで、いい?」
ふたりだけ、だし。
分け合うなら、足湯の楽しみと共に、互いの体温も。
「当たり前だろ、ほら」
へらと笑って差し出される手。
へにゃり笑って重ねれば、それを引かれると同時に、そっと肩を寄せ合って。
「……あったかい」
ぽつり呟くロイにガルソも目を細め、ふと気付いた掌の硬質な感触に指を滑らせた。
「すげー不思議、これ」
「っ、くすぐったい」
ロイの掌の、賢者の石。時折彼の指が掌をかすめる感覚に、くすくすとロイが笑う。その、どこか幼くすら見える横顔に、ガルソは思わず肩の力が抜ける。
「……」
年上で、ガーディアンの、彼。
守られているのは、自分。それでも、守りたいと思う気持ちはきっと、間違ってないと思う。
「ロイ」
「ん」
空いた右手で項を引き寄せて、頬に軽くキスを落とす。
当然、突然のことにぽかんとしたロイの頬が、僅かの時を挟んで朱を昇らせた。
「っ?」
「くく。これからもよろしくな、ロイ」
「な、ん? う、うん、もちろん……っ」
判らないながらも、当たり前と肯く彼の髪をくしゃくしゃと撫でて、ガルソは満足気な笑みを浮かべる。
ふたりでこれからも共の道を、歩んで行こう。
楽しさふたりで分け合って、楽しさ二倍に重ねながら。