■リヴァイアサン大祭2012『小川のチョコを使って楽しいチョコ料理』
「これで最後の分が出来上がりっと……」エイミとノヴァは、作ってみたら割と評判は悪くなかった『お肉のチョコレート煮』を旅団の仲間へ持って帰る為に、鍋の前で奮戦していた。
「お疲れ様です、エイミさん。……それにしても、いつもながらお手前はお見事としか……。きっと、エイミさんの旦那さんになる人は幸せでしょうね」
「うっ、」
その言葉に、エイミが思わず膝を付く。
親友と過ごす大祭も、楽しくない訳ではない。
ないのだが、あくまでそれは次善、ベストな現実ではない。
出会いもろくに無い現状を嘆くエイミに対して、その一言は地雷としかいえない。
「すっ、すみません。え、えぇっと、つまり――」
「いや、うん、大丈夫、大丈夫……」
激しく落ち込んだものの、失言に気付き慌てに慌ててフォローをしようとするノヴァを見て、なんとか正気を取り戻す。
「うん、リア充には程遠かったけど……今年は色々と出会いが多かったなぁ……。今の旅団の皆やノヴァと出会ったのも、それの内の一つと言えるのかもしれないし」
恋人こそ出来なかったものの。
一人の、一人前のエンドブレイカーとして頑張ってきた一年。
色々な人と出会い、そして縁を紡いだ親友と出会ったことを振り返る。
「そうですね……わたしもエイミさんと同感です。……正直、エイミさんが殿方でしたらコロリと堕ちていたかも知れませんね。今頃」
「ちょっ!? ノヴァちゃんっ!!」
突然何を言い出すの!? と慌てるエイミに、ノヴァは悪戯っぽい笑みを向ける。
「それだけ魅力的な人物だと言う事です。だから自信を持って下さい、そのうち良縁も来ますよ……。もし駄目だったら、責任もって貰って上げますから」
「あっ、あのねぇ……」
そんな風に仲睦まじく騒いでいるうちに、上空をリヴァイアサンが通りがかる。
慌てて外に飛び出した二人の目に映るのは正しく威容。
「おわぁ……あれが、リヴァイアサン」
「エイミさん、今の内に願い事を」
「う、うん」
(「親友の縁が永遠に続く様……そして、あわよくば素敵な王子様を」)
願い事を済ませて隣を見ると、同じく願い終えたらしいノヴァと目が合う。
満面の笑顔を見せるノヴァ。
(「うん、きっと――」)
エイミの願いは、少なくとも前者に関しては叶うらしかった。