■リヴァイアサン大祭2012『Promise』
凍えるくらいに冷たい寒風の中、広場の華やかな街明かりの下。空からは白い雪が舞い散り、風に乗ってアッシュの視界を横切っていく。
けれど、雪の白よりも彼女の肌のほうが尚白いと、アッシュは誇張抜きにそう思う。
今の時刻は午後七時。一日の締めくくりと言ってもいい時間帯だけど――。
今日は年に1度のリヴァイアサン大祭。
祭りの活気が満ちる町には、まだまだ多くの人があふれている。
そんな人の行きかう広場の外れで、髪についた雪を払ってクリスチーナに向き直ると、小さく息を吸ってアッシュは切り出した。
「じゃあ、約束どおりに」
「ああ」
二人が交わした約束は、一番贈りたかったものを夜に交換するというもの。
日中は互いに忙しいけれど、夜なら時間が取れる――。
なら、夜の逢瀬までにプレゼントを交換する準備をしておこう、と。
だからこれは、少し前に交わした約束が形になる聖夜のワンシーン。
アッシュも、クリスチーナも、それを欠片も顔には出そうとはしないけれど……。
でも、二人が待ち望んだ瞬間だった。
「――これで同じものだったら笑っちまうな?」
「そうか? 私はもしそうでも、おかしくないと思っているよ」
少し照れの混じったアッシュの声に、小さく笑って応じるクリスチーナの声。
せーの、と、掛け声にあわせて、二人同時に取り出したのは――。
「――ほら、だから言っただろう?」
その瞬間、アッシュは息を止めて、彼女の微笑に見とれた。
雪明りに照らされた白い肌は、少しだけ上気して朱を帯びていて、
「付けさせてくれ、アッシュ。……その後は、わかるだろう?」
アッシュの視界の中で、クリスチーナの瞳が揺れる。
それは、彼の薄い青よりももっと深い、吸い込まれそうな藍色の瞳。
ほんの少し潤んで喜びに揺れる彼女の瞳を見つめて、アッシュは言葉を失って――。
「……分かってますよ、お姫様」
少し芝居がかった仕草でクリスチーナの手をとると、アッシュは彼女に贈るプレゼント――小ぶりなリングを、彼女の指にゆっくりと通すのだった。