■リヴァイアサン大祭2012『……寒くない?』『はい。おかげさまで』
リヴァイアサン大祭では、氷のダンスホールを筆頭に、エルフヘイムの様々な場所でパートナーとの絆を深めるためのパーティが催されている。そんなパーティ会場の一つに、ラーズエルはヤマナを誘って参加していた。
しかし、あまりの人の多さに疲労を覚えたヤマナは、会場に繋がるバルコニーへと足を運び、深々と降る雪を眺めていた。
「……雪は都会でも同じように降るんですね」
自らを追ってバルコニーにやってきたラーズエルに、ヤマナは声を掛ける。
故郷の辺境の地から離れ、疎外感を醸し出すヤマナ。それに対し、ラーズエルはそっと傍に居続けた。
「……寒くない?」
元来、口下手な二人であったためそのまま無言で雪を眺めていたが、間が持たずに声を掛けるラーズエル。
ヤマナはこのパーティのために深い緑色のドレスを着ていたが、肩より先の袖が無いために雪の中では寒さを覚えても不思議ではない姿だった。
そのために、ラーズエルは自ら着こんでいたコートを薦めたのだ。
「いえ、私は大丈夫です。あなたこそ、そのコートを脱いでしまっては寒いのでは?」
しかし、ヤマナもラーズエルに対し遠慮をする。元々肌の露出を気にせず、氏族の衣装で過ごすヤマナだったので、さほど寒さを感じている様子はなかった。
互いが互いを遠慮し合い、最終的に二人で羽織ろうという事になった。
が、一つのコートを二人で羽織るとなれば、当然ある程度二人は密着しなければならない。
ヤマナは現在、彼女の豊かな胸元が大胆に開かれ、女性らしい肢体の魅力を全面に押し出したドレスを着ている。そんなヤマナと密着して、ラーズエルは気恥ずかしさから顔中が真っ赤に染まっていた。
ヤマナの方はそんなラーズエルの様子などお構いなしに、寒くは無いが折角ならばと温もりを求めて彼の胸元に頭を預ける。
これには、ラーズエルの頭から湯気が噴出する程赤面したのは言うまでもない。
しかし、ラーズエルも恥ずかしいより、ヤマナの温もりを手放そうとはしなかった。
一つのコートの中で、不器用な二人は想いを伝え合うように寄り添い続けた……