■リヴァイアサン大祭2012『Foster bond of Affection-天華-They call it a wish』
その日、リョクエンとディアはエルフヘイムへ出掛けて行った。脚を踏み入れると緑の香りが濃い森の中には、木漏れ日がキラキラと射し込んで神秘的な雰囲気を漂わせている。
森の主と触れ合うためにその近くに参り、リョクエンが差し出すのは可愛らしいリース。草花で編んだ冠のようなそれを、森の主に渡すリョクエンの隣で、ディアも挨拶をした。
ふと見ると、リョクエンはその背に乗りたそうな表情で森の主を見つめており、ディアは苦笑した。
「乗るなよ?」
すると普段と違うリョクエンの言葉。
「……だめ?」
「可愛く言ってもだーめ」
ざわざわと木々が葉擦れの音を奏で、森全体もこの日を喜んでいるようだった。
ディアは名残惜しそうなリョクエンの手を取り、リヴァイアサンが最も近くを飛ぶのが見られる場所へと誘う。
「な、見に行かね?」
恋人に誘われれば断る理由は無い。
今日は一年に一度の特別な日、リヴァイアサン大祭なのだし。
星降るリヴァイアサンの丘に着くと辺りは雪景色。2人は雪兎を作って遊びながらリヴァイアサンが出現するのを待つことにした。
せっせと雪を集めてリョクエンが作ったのは、後ろ足で立ち上がって華を持った可愛らしい雪兎。
「できたー、クロノス♪」
「お、可愛いな。こっちも歯車刻んでみるか」
ディアは作った雪兎に器用に作り上げた歯車を付け加えて、リョクエンの雪兎と並べて飾ってみた。
まるで自分達みたいだ。
寄り添い、とても幸せそうに見えるそれを、しゃがみ込んで暫し見詰めていた。
やがて空からも雪が舞い落ちてきて、ふとリョクエンが立ち上がって空を指す。
雄大に空を泳ぐリヴァイアサン。
リョクエンの隣に立ち、雪降らせながら舞うような幻想的な光景に見惚れるディアは思わず呟いていた。
「これがリヴァイアサン……普段見えないのが勿体無い……」
リョクエンはディアの方を振り向き、その深紅の双眸を見上げる。
「……幻想的で綺麗だな」
その笑顔にディアも微笑み、楽しそうな恋人の頬にそっと手を添えつつ、そのまま引き寄せてキスをした。
「リョクエン……」
「……っ……ディア」
恥ずかしそうに赤面して、リョクエンはそれでも恋人の逞しい胸元に寄り添う。
「リヴァイアサンが見てるわ……」
そんなリョクエンを糸目になって微笑みながら寒いだろうと自分のコートで包んでやれば、彼女はディアにマフラーを巻くのだった。
互いを想い合って労わり合う。
そんな2人をバルカンと雪兎が見守っている。
絆が長く、出来るだけ長く続くよう願掛けだ。そんな想いを込めた口付けを交わす恋人達をリヴァイアサンも祝福するように舞う夜空。
煌めく雪は天から降る華のようだった。
愛情の絆を育んでいくこと。人はそれを願いと呼ぶ。
幸せな時間を、これからも2人で過ごしていけるように。
恋人達は切なる願いを胸に抱き締め合うのだろう。