■リヴァイアサン大祭2012『いつも一緒に』
誰の足跡も無い雪道。それだけで特別な感じがする。
今日が一年に一度のリヴァイアサン大祭だというだけでなく、大好きな相手と過ごすのだからなおさらだろう。
マスターとガーディアンというのも特別な間柄といえよう。恋愛感情とは違っても、それに近いものはあるかもしれない。
ソウジは思うのだ。
傍に居続けることを許されるなら、いつまでも居たいと。
隣を歩くエヴァンジェリと2人で使えるくらい長い一つの赤いマフラーを巻いて、昼の雪道を散歩。そこに記されるのは2人だけの足跡。
何気ない話をしながら、とくに示し合せなくても同じ歩幅で歩けるのは互いをよく知り思い合っているからだろう。
雪の上に真新しい足跡が続いていく。
「ねね、コレどーかなぁ? 似合ってるぅ?」
ソウジは、首元のチョーカーを指してエヴァンジェリに問うた。
それはエヴァンジェリとお揃いで、マスターとガーディアンの誓いとして互いに贈りあったもので、つまり問いかけるまでもなく、およそ自慢に近いものだった。
さりげなく、からかって面白がっているのだ。
「んーまぁ」
返されるのは生返事。
エヴァンジェリの方は自分の贈ったプレゼントを自慢されるという状況に放心気味になっていた。照れるあまり意識が逃げ腰になっているのかもしれない。
さくさくと幽かな音を立てて歩き続けながら、ふとソウジは普段と違う反応の彼女を気にして顔を覗き込む。
「エヴァどうしたのー? 顔赤いよぅ、熱とかない?」
額を寄せて、間近で瞳をすっと見据えて。
「ねぇねぇ大丈夫ー?」
ソウジの赤い瞳の中で、エヴァンジェリの茶色い瞳が真ん丸く見開かれて目に見えて狼狽える。
「うぇ、だ、大丈夫……も、問題ないよソウジたんっ」
ソウジは日常的にこういう悪戯をするから。
不意打ちの発言をされると狼狽えてしまって本心には気付かないけれど。
エヴァンジェリが大好きだ。
からかうと面白いから敢えてやめないけれど、ソウジはガーディアンという特別な居場所に感謝しているのだ。
だからせめて誓うのだ。
「ダメと言われても傍に居るから」
「……え、あ、おおぉう?」
きゅうっと繋いだ手に力がこもる。
「エヴァが照れたーぁ!」
これからもそんな風に、いつも一緒に。