■リヴァイアサン大祭2012『二人だけの舞踊〜銀雪藍雨〜』
リヴァイアサン大祭が行われるエルフヘイムには、多くのエンドブレイカーが集まり、沢山のにぎわいに包まれていた。しかし、自然に囲まれたこの一角は、降り積もる雪が周囲の音を消し去り、まるで静寂に包まれた白銀の聖域のようだった。
皆が祭に興じる中、ふたりの少女だけが、その白銀の聖域に足を踏み入れる。
今日は、年に一日だけの特別な日。
大切な人との絆を確かめるように、少女たちは、お互いの手を取り歩みを進める。
「アマネは、リヴァイアサン大祭は初めてだったね……どう、楽しめているかしら?」
「はい、とても楽しいです。こんなに雄大な自然に囲まれた雪景色は初めてです! それに、ユキと一緒ですし……」
気づかうように囁きかけるユキに、アマネは満面の笑顔で答える。
言葉の最後は、すこし照れたようにうつむいて。
「来年もまた、アマネと一緒に、このお祭に参加したいね」
「来年だけなんですか?」
ユキのもらした呟きに、アマネはすこし意地悪く、拗ねたように問いかける。
「ふふ、来年も、再来年も、その先もずーっとアマネと一緒にいたいな」
「わたしも、ユキといつまでも一緒にいたいです」
ふたりの少女は笑顔で見つめあう。
木々の間から差し込む月光が、照明のように白銀を照らす自然のステージ。
そのステージに、まるで騎士のような仕草で、アマネをエスコートするユキ。
「アマネ……あなたの舞を見せてくれないかしら?」
突然の申し出に、驚き慌ててアマネが答える。
「ふわわわ。は、はい。それでは……舞わせていただきます」
舞いふる雪の中で、ふわりと舞うアマネ。
緩急をつけた独特のリズムは、天津に伝わる舞踏や神楽なのだろう。
アマネの舞をしばらく見ているうちに、ユキも自然と身体が動き出す。
アマネの舞とは異なる、ダンスのようなリズムだが、ふたりの呼吸は自然に一致する。
ユキがアマネに手を差し伸べると、アマネはその手を取り、ふたりのリズムがひとつになる。
舞でもなく、ダンスでもない、ユキとアマネのふたりにしか刻めない、特別なリズム。
「ユキ、このお祭に誘ってくれて、ありがとうございます。今日は、本当に楽しい一日でした。とても良い思い出になります♪」
「そう、それは良かったわ。これからも、いっぱい楽しい思い出を作りましょう」
ふたりは疲れるまで踊りあかして、その場に座り込む。
「辺り一面が雪でいっぱいですね。ふふ、まるでユキに包まれてるみたいです」
「わたしは、こんなに冷たいのかしら?」
踊りつかれて座り込んでいるアマネを、ユキが後ろから、ぎゅっと抱きしめる。
「ふわわわ、ユキ、くすぐったいです……もう、ユキったら」
「こうして、ふたりでいれば、どんな時でも暖かいわよ」
「そうですね……いつまでも、ふたりで……」
ふと空を見上げると、まるで、ふたりの永遠の絆を祝福するように、星霊リヴァイアサンが通り過ぎて行った。