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2人でリヴァイアサン大祭

常夜の歌姫・ヤト
花の妖精騎士・ウェンディ

■リヴァイアサン大祭2012『白い雪と小さな温もり』

 静かに降り続く雪は、辺り一面を白く染め上げていく。人気のない夜の森には、足跡一つない真っ白な絨毯が広がっていた。
 ――サクッ、サクッ……。
 柔らかい光と2つの影が通った後には、2人分の足跡が規則正しく並んでいた。
「今日は楽しかった?」
「はい!」
 雪夜を柔らかく照らすランタンを持ったヤトが問い掛けると、ウェンディが満面の笑顔で頷く。
「飴を作るの、凄く楽しかったです!」
 今日はリヴァイアサン大祭。小川には甘い蜜が流れており、2人はお昼にその蜜から飴を作ってみたのだ。
「ふふ……ウェンディは作るのより、出来たのを食べる方が楽しかったんじゃない?」
 ヤトが昼の光景を思い出しながら、少しからかうようにクスっと笑う。
「そ、そんなこと! ま、まぁ……甘くて凄く美味しかったですけど……美味しくて感動もしましたけど……」
 ウェンディは否定……しようとしてしきれなく、「本当に作るのも楽しかったんですから!」と、頬を染めて力説した。
 少し恥ずかしそうに力説するウェンディを微笑ましく思いながら、「そうね、楽しかったわね」とヤトが優しく微笑む。
「そういえば、ラッドシティで一緒に食べたクレープも美味しかったわよね」
 まだ少し恥ずかしそうなウェンディの為に、ヤトが違う話題を出した。
「甘くてとても美味しかったですよね!」
 ウェンディはそのクレープの味を思い出して瞳を輝かせる。
 エンドブレイカー達で行なったパレードとダンスの話になると、ヤトの瞳が楽しそうに輝いた。レース編みなんかもした話、新天地のマギラントの話――次々に浮かぶ思い出話に華が咲く。
「今年も色々あったわね、でも楽しい一年だったわ」
「はい、楽しい記憶が昨日のことのように思い出せます……」
 懐かしむようにヤトが呟くと、ウェンディは手を胸にあて、感慨深く頷いた。
 記憶を――過去を失っているウェンディ。遠い過去を失っていても、こうして新しい今が続いている。
(「先にある未来もこうして二人で歩けば、きっと大切な過去へとなるでしょう……」)
 ヤトの眼差しは自然と優しいものになっていた。
「また来年も一緒に遊びましょう」
 柔らかく微笑んだヤトが手を差し出す。その言葉にウェンディは微笑んで手を繋いだ。
 そのまま2人で白い絨毯に新たな足跡を残し、歩き出す。――温もりを伝え合いながら。
イラストレーター名:mika