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2人でリヴァイアサン大祭

銀の十字架・ルーファス
桜花ひとひら・スズカ

■リヴァイアサン大祭2012『二人の時間』

 賑やかしい祭りの喧騒から離れた、ふたりだけの部屋。
 温かい室内に、敢えてカーテンを開いてみれば、夜空に舞う白銀が幻想的だ。
 まるで御伽噺の妖精のような、白いふわもこのふち飾りのついた赤いケープを揺らして、スズカはとん、と最後の料理──焼き上がったばかりの立派な七面鳥──をテーブルに並べた。
 その他にも、オードブルのサラダに、甘い香りの湯気立つクリーム・シチュー、それからふんだんにチョコレートを使用した、ガトー・ショコラ。
「はい、お待たせしました、ルーファス。今日は特に、腕によりをかけたんですよ。たっくさん食べてくださいね」
「もちろん。ありがとう、鈴」
 メリー・リヴァイアサン。
 ふたり、掲げたグラスにはスパークリング・ワイン──は、まだ少し彼女には早いから、爽やかな香りのアップル・サイダーを。
 美味しいというルーファスの言葉に偽りなく、スズカの用意した料理は、昼間の内に訪れたチョコレート・フォンデュの小川から、去年のクロノス大祭、更に前のリヴァイアサン大祭にまで及ぶ楽しい会話の内に、見る間に綺麗になくなった。
「ケーキ、切り分けましょうか」
「いや。それよりも、鈴」
 立ち上がったスズカに、ルーファスはぽんと自らの膝を叩いて示す。
 どうも彼は、その膝に彼女を抱き寄せることが、好きらしい。
 そして彼女も、きっと、それは嫌いでは、決してないのだろう。
 ルーファスの行動の意味をすぐに悟って、おずおずと、彼女はその場所──彼女だけの、場所へと移動して、
「……あ、あぅ……」
 けれどやっぱり、照れるものは照れるんです。
 頬を染める彼女が愛おしくて仕方ないルーファスは、いいこいいこ、と彼女の金を帯びた琥珀の髪を撫でる。
 いたたまれなくて、スズカはフォークにケーキをひと掬い。
(「お昼間のお返し、ですっ」)
「は、はい、ルーファス、あ、あーん……」
 懸命に言った台詞は、けれど自発的に言うのも、勇気が要って。
「あーん」
 相手が全く動じずに口に含み、にっこりと笑うのならばそれはもう、完全なる敗北で。
「あぅ〜……」
「美味しいよ、鈴」
 更に頬を染めるスズカに、ルーファスは言って、彼女が落ちないようにとしっかりと膝の上に抱き寄せた。
 彼女が視線を上げれば、今日、自らが送った紫の石光るチョーカーが彼の首に覗く。思わず自らの首の白桜のチョーカーも確かめて、彼女はほろりと口許を綻ばせた。
「どうした?」
「……内緒、ですっ」
 首を傾げる彼に、今度こそほんの少しの、意趣返し。
 でもきっと、あなたも思ってくれてるだろうけど。

 ──この幸せが、来年もこの先もずっとずっと、続きますように。
イラストレーター名:綾瀬みゆき