■リヴァイアサン大祭2012『ダンスの後、雪空の下で…』
一年に一度の特別な日。リヴァイアサン大祭のこの日、各所でパーティが開かれ人々はそれぞれ大切な人と過ごし楽しんでいた。
夜も更けて気温は下がっていったが、寒さは大切な人との距離を縮めてくれる。
シャルロは闇色のイブニングドレス姿のゼノンをエスコートしながら、ダンスパーティの輪を離れて静かな場所へ歩いて行った。
二人でドレスアップして踊るのは楽しかったけれど、正直なところシャルロはゼノンの綺麗なドレス姿を誰かに見せたくないのだ。
普段は男性と間違われるほど凛々しいゼノンだけれど、もともとスタイルがいいし、この日ばかりは露出度の高いドレスを身にまとっていたから豊かな胸元なんかに変な視線が集まっている気もする。
もちろんシャルロはそういう奴には殺気を送っておいた。
ゼノンは内心、そんな彼の考えていることがとてもわかりやすくて、そういう所も可愛くて好きだと思う。
シャルロはゼノンを独り占めしたいななどと考えてこうして二人きりになってみたけれど、外は寒い。
風邪でも引いたら大変だ。
「ゼノン寒くない?」
「ありがとうシャル、お前こそ寒くないか?」
肩にかけられるシャルロのタキシードの上着。
「俺は大丈夫だよ」
その瞬間、派手なくしゃみ。
ちくしょう、空気読めよくしゃみ。
そんなシャルロの手を取り、両手でそっと包み込む。
「シャルの手冷たいな……もっと暖めないとダメか」
だからシャルロに抱きついた。そうしたらぎゅっとし返されて。
ゼノンの手も冷えてしまわないかとシャルロは心配したけれど大丈夫そう。
だってこんなにも暖かい。
「ゼノンが一番あったかいね」
そう、心までぽかぽかだ。
いつも穏やかな表情を崩さないシャルロは、ひどく白い肌を少し赤らめて微笑む。
二人を祝福するかのように、空から舞い落ちてくる、たくさんの小さな風花。
「シャル、雪が降ってきたな……」
「あ、本当だ。雪だ」
周囲には誰もいない。
それだけでなく、雪の降る日はどうしてこんなにも静かなんだろう。
シャルロのタキシードにも、ゼノンのオレンジの髪に飾られたドレスと同じ色の花飾りにも、雪はふわりふわりと舞い降りて、音も無く消えていく。
街灯にかすかに光る白い雪はやがて木々も道も白に染めていくのだろう。
二人きりでこうして見る雪もいいものだ。
リヴァイアサン大祭だから。
二人でいるから。
幸せな夜はまだ続く。
そうして明日もこの先もずっと二人で。