■リヴァイアサン大祭2012『君の体温』
二人でこの日を過ごすようになって、何度目になるのだろうか。今年はロイにとってもレイアにとっても、特別な年となった。
恋人という位置づけから、一生の伴侶へと。
冬空に舞うリヴァイアサンと、ちらちらと降る白銀の六花を見上げながら、新たな気持ちで過ごす二人の時間を、ゆっくりと噛み締めていた。
立ち位置が変わったと言えども、彼にも彼女にも変化はない。
同じように愛しく、これからもずっといつくしみたいと言う気持ちには、少しのゆらぎも無いのだ。
「今日は寒いね」
ロイからそんな言葉が漏れた。
レイアはそれにつられるようにして彼を見上げようとしたが、それは出来なかった。
背中に温もりを感じたからだ。
その温もりは彼女の肩も腕も包み込んで、一気に心すらも、距離を縮めたかのような感覚だった。
「……うん。でも、もう平気」
すっぽりとロイに後ろから抱きしめられた形となったレイアは、ぽつり、とそう応えた。
布ごしでもわかる、お互いの温かさ。
それに心が安堵したのか、レイアは自分の頬が熱くなっていることに気がついて、少しだけ慌てた。
ロイは、小さく笑うのみだ。
「もう、ずるいわ……」
むくれるようにしてレイアがそう言えば、ロイはまた、腕の力を強めてくる。
この先、どんなに寒くて、凍える日があろうとも。
腕の中のぬくもりを感じられれば、それだけで、あたたかい。
たとえば、つらく、かなしい時もあるだろう。病に倒れることもあるかもしれない。
それでも。
二人が一緒であれば、きっと乗り越えていける。
愛しくて何もりも大切な、彼女という存在。
そして、彼という存在。
音にすらならない感情は、レイアにもきちんと伝わっていて、また、同じようにして相手を思う。
ほわりと、くちびるからもれ出る白い息。
それが宙で混ざり合って、ゆっくりと消えていく。間近でそれを見たレイアは、ふふ、とほほえんだ。
空からはキラキラとした雪の花が、まだ降り続けている。
星霊リヴァイアサンがもたらす、魔法のような奇跡。
宝石のような輝きを見つめ、そして感謝しながら。
二人はそれからしばらくの間、身を寄せ合っているのであった。