■リヴァイアサン大祭2012『かまくらでぬくぬく!〜雪面下の戦い〜』
星霊リヴァイアサンの恩恵により降り出した雪は、辺り一面を銀世界に染め上げていた。木々は白い化粧が施され、剥き出しの大地もまた、厚い雪の層で覆われている。
だから、かまくらを作った。二人で、ささやかなパーティを行うために。
雪を積み上げ固め、中をくり抜いて雪洞を作る。アマツカグラに伝わる『かまくら』を端的に説明すればそんなものだ。
昼から作り上げたかまくらも、全ての準備が整った頃には既に日が落ちている。
「ほ。こりゃ立派なかまくらが出来たねぇ」
終わったと全身の筋肉をほぐすように伸びをするヒスイに近づいてくるのは、彼が祖父のように親愛の情を抱くマンジだった。
「お疲れ、ひーくん」
ヒスイの頭に積もった雪を払う動作が、労いの言葉が心の底から掛けられたものだと示している。
「喜んでいただけたら何よりですよ」
柔らかな微笑み。その視線の先が示すのは、かまくらの中に設置された炬燵と、大量の酒。既に二人で行う宴会の準備は整っていた。
「ほんだら、酒盛りといこうかね」
ほくほく顔のマンジの笑顔を見て、改めてかまくらを作って良かったなと思うヒスイであった。
酒が注がれ、二人の口の中に消えていく。肴はマンジが用意したアマツカグラ風のおつまみ。そして、ヒスイが「せっかくだから」と用意したケーキだった。
そしてもう一つ。
かまくらの外、雪にまみれながらも駆け回るペットたち。その愛らしい姿もまた、立派な酒の肴である。
「ひーくんの持って来てくれる酒は、いつも美味しいのぅ」
それらに舌鼓を打ちながら、ご機嫌な様子のマンジ。ヒスイもまた、ペット達を、そしてそれを楽しむマンジを見ながらゆっくりとグラスを傾ける。
ゆったりと穏やかなこうして過ぎていった。
さて。
実はヒスイにはマンジに告げていない秘密があった。
彼の纏ったジャケット。その内側に、プレゼントする予定のミサンガがある事を。
それを眠ったマンジの枕元に置く。そんな計画をヒスイはしていた。
だが。
「ひーくんも疲れたじゃろう? 早めに寝たらどうじゃ?」
なかなかマンジも寝ようとしない。逆に自分が先に眠る事を提案される始末だ。
「ありがとうございます。でも、片付けもありますし、ご祖父こそ、早くお休み下さい」
笑顔で就眠をマンジに促すものの、マンジはそれを聞き入れてくれない。
「寒くありませんか? そろそろ横になられた方が……」
「いやいや、ひーくんこそ……」
互いに酒を勧め、そして繰り返される問答。
やがて、日の光がかまくらの入口を差し込む頃、それでも、意地になった二人は互いに就寝を促し続けていた。
ヒスイは知らなかった。
マンジもまた、その袂にヒスイに贈るべく用意した腕輪を忍ばせ、その枕元に置こうとしていた事を。
結局、似たもの同士の二人の問答は、夢に潜り込んだペットを置き去りにし、続くのであった。