■リヴァイアサン大祭2012『あなたとわたし』
それは、リヴァイアサンが夜空を翔る日の出来事。「……綺麗だな」
トウキがそう呟き。
「リヴァイアサンが空を舞うのは一年に一度らしいからねー」
ソラリスがそれに応えた。
エルフヘイムのとある樹の上。二人は寄り添うように並んで座り、共に夜空を見上げていた。その視線の先では、リヴァイアサンが優雅にその身を躍らせ、それに合わせるように、二人の周りをゆっくりと純白の雪が舞っていた。
時々、白い息が宙を舞い、夜闇に溶けていく。
辺りに満ちる冷気は決して易しいものではないが、二人にとっては大した問題ではないようだ。
繋いだ手は暖かく、隣にいる者の存在が、心を満たしてくれているのだから。
トウキは、ソラリスの横顔を眺めた。少し視線を下げれば、そこには黒いマフラーが巻かれていて、それを辿っていくと自分の首に巻かれたマフラーにつながっている。
それを見ると、ついつい笑みがこぼれてしまう。嬉しくて、甘えるようにソラリスに身を寄せた。
マフラーは、ソラリスがトウキへ贈った物だった。
黒色のマフラーは、愛を象徴したりもするらしい。ソラリスとしては、そんな意図が伝わっても伝わらなくても構わなかった。ただ、愛しい人に送りたかった。
伝わったかどうかは解らないけれど、大切な人同士の絆を確かめ合うこの日に、この場所で、一緒に居られることが何よりも嬉しかった。
身を寄せたトウキの身体を、ソラリスは優しく微笑みながら抱き寄せる。
そうやって受け入れてくれるソラリスが、たまらなく嬉しくて、言葉にならないほど幸せで、トウキはソラリスを抱きしめ返した。
「ソラリス、愛してる。俺の傍で笑っていてくれ」
すぐ間近で囁いた言葉は、風に消えることなく相手に届く。紡がれた言葉に込められた想いは、色褪せることはなかった。
しんしんと降る雪の中、二人はこの幸せな時間を過ごした。
枝に吊るされたランプの明かりが、二人を優しく照らす。
「自分の意志で傍にいるよ。ずっとかどうかはトウキ次第、かな」
ソラリスがそう言い。
「ずっとずっとだ。絶対に離さねぇよ」
トウキがそう応えた。