■リヴァイアサン大祭2012『ふたりのラーメン屋〜メンマ兄妹兎麺馬 休息編〜」』
今日はリヴァイアサン大祭。まるで星霊が祝福してくれているかのような神秘的で美しい祭りだ。そんなとある広場に、『兎麺馬』と書かれた暖簾を掲げた屋台があった。
「いらっしゃいませ〜♪」
「イラッシャーイ♪ 寒いこのキセツ、オイシイラーメンはどうかな?」
どうやら、ラーメン屋の屋台のようだ。客引きをしているのは、メンマの着ぐるみを着ているオルノースとエリアルだった。
屋台の宣伝ということで着ぐるみを着ているのだが、格好がメンマとはユニークなチョイスである。だがこのメンマの着ぐるみは困ったことに腕が出せない作りになっている。不安定な直立不動の姿勢を保たなければならないわけで……。
「兎麺馬のラーメンはウマ……わっ!?」
やっぱり転んじゃった。
「オル、大丈……きゃっ!?」
「おぉう!?」
更に助けようとしたエリアルも、彼に折り重なるように転んでしまった。
助けようにも上にエリアルがいるから起き上がれない。
と、そこに。
「ふむ、面白い格好だね。一杯頂けないかな?」
老紳士風の人物が微笑みながら二人に話しかけてきた。
それにすぐに気付いたエリアルは、飛び上がるようにして起き上がった。
「今着ぐるみ脱ぐので、待っててください。すぐ作ります!」
そう言うとエリアルは着ぐるみを脱いでチャイナドレスに着替え、屋台に立つと急いでラーメンの調理に入った。
すると、老紳士は着ぐるみのまま客の呼び込みをしているオルノースを暫くじっと見つめると、指差して悪戯っぽく笑いながらエリアルに訊ねてきた。
「あのメンマはのせられないかね?」
「ちょ、俺はトッピングできないよ!」
「はいはい、ラーメン定食入りました〜♪」
振り向きながら仰天するオルノースに、エリアルは老紳士につられる様に笑ってラーメン定食を差し出した。
そんなこんなで仕事を終えると、二人は水着に着替えて近くの温泉に入ることにした。
「今日はよく働きましたね! お疲れ様でした〜♪」
「ン〜後からイイ感じで客が着てくれたから上々だね」
二人は今日の仕事ぶりに満足して互いに笑い合った。
「温泉と言えば、やっぱり……これですよね!」
エリアルが見せたのは風呂桶に入れた徳利とお猪口だった。但し、中身は紅茶である。エリアルは徳利を持つと、オルノースのお猪口に静かに紅茶を注いだ。
「おっ、イイねイイね。イイ香りだよ♪」
オルノースはお猪口から広がる香りに思わずうっとりした。
それから二人は酒宴ならぬ茶宴を楽しんだ。
「今日はイソガシかったけどタノシかったし、エリアルと一緒に温泉に入れて俺シアワセー♪」
「私もシアワセー♪」
おどけるように喜ぶオルノースに、エリアルもマネっこした。
「何をしてても、オルと一緒が一番うれしいです……!」
「俺もエリアルとずっと一緒で、もうサイコー!」
こうして愛の言葉を交わしながら、リヴァイアサン大祭の夜は更けていった。