■リヴァイアサン大祭2012『騎士と翼の溺れる夜』
「どうしたいんだい、子猫ちゃん」最近同じ旅団に入団したメノと、リヴァイアサン大祭の夜に二人きりになったキリスティアが瞳を妖しく光らせる。
テーブルの上には軽食やケーキ、飲み物が並んでいた。
「……ん、ちょっと飲みすぎたかしら」
普段は眼光鋭く、あまり表情を変える事のないメノだが、瞳をとろんとさせてうっとりと呟いた。
言いつつも、グラスを手にして「美味しい……」と、口をつける。
久し振りに気の置けない人と過ごす時間は楽しく、ついついお酒のペースが上がっていた。
「フフフ……」
(「今日は邪魔も入らないし……」)
瞳に宿した妖しい光を更に深くしたキリスティアが、すっと身を乗り出す。そのままメノが手にしているグラスを静かに取り上げた。
「?」
メノは不思議そうに、取り上げられたグラスを目で追う。
(「自分でも飲みすぎたかと思っていたけど……もうやめておけって事かしら……」)
アルコールの回った頭でぼんやり考えたところで、すんなり美味しいお酒への未練が消えるわけではない。遠ざかるグラスをじっと見つめてしまう。
キリスティアは、メノの視線に気付きつつも、グラスをそっとテーブルに置いた。
グラスから手を離すと、ずいっとメノに近付き、肩に両手をかける。
「前からこういう事をしてみたかったんだ、フフフ……」
――ドサッ……。
そのままメノを押し倒して覆いかぶさった。
「あら、どうしたの?」
押し倒されたにも関わらず、いまいち状況が掴み切れないメノ。ぼんやりとキリスティアを見上げる。
「フフフ……メノの肌は綺麗だね……」
キリスティアの声には艶が帯び、メノの頬をゆっくりと撫で上げた。
「そうかしら……」
メノは、頬に伝わるキリスティアの熱を感じて、その指先を視線の端に捕らえる。
「メノ……」
「……」
キリスティアが優しく名を呼ぶと、メノが視線を真上にあるキリスティアの目に合わせた。
「今晩は長い夜になるからね。じっくり楽しもうじゃないか」