ステータス画面

2人でリヴァイアサン大祭

上手く生きるのが下手・ソル
廻るセントウレア・ナギサ

■リヴァイアサン大祭2012『彼氏?(窓から)捨ててやったわ』

 リヴァイアサン大祭、早朝。
 宿の部屋をノックする音に起こされたナギサは、冷たい床に爪先立ちでドアノブを回した。
 扉の向こうにいたのは宿の亭主。届け物だと言い、重そうな大きな箱を薄暗い部屋に運び込んだ。
「なに……これ。何かを頼んだ覚えは無いけど……?」
 起きぬけでまだ頭がハッキリしていないから、思い出せないのだろうか。ナギサはカーテンを開け、藍色に流れる髪を後ろでキュッとまとめてからもう一度、でかい箱を見てみた。
 朝の光に照らされた箱は、ピンク色のリボンで可愛く梱包されている。
 すすすっと蝶々結びのリボンを解き、水玉模様の可愛い蓋を開けてみると……。
「メリーリヴァイアサンッ!! 今年のプレゼントは……俺だっ!!」
 舞い上がらせた紙吹雪を追う様にして、箱の中から勢いよくソルが飛び出した。ナギサの彼氏である。
「……」
 一瞬の間があった。
 無反応だったナギサは、しかしニコッと相好を崩し、素敵なプレゼントをくれた恋人……ソルの精悍な顔に愛らしい手を伸ばして……わしづかみ、全体重を乗っけて箱に押し込んだ。
 蓋とリボンを拾い上げ、厳重に梱包し直す。
「ちょっ!? 開けろっ! 開けてくれーっ!!」
 箱の中から叫ぶソルの声を背に、ナギサは窓を開ける。箱を窓際まで引きずり、窓枠へ押し上げ、外へポイッ。
 終始笑顔のままのナギサに、落ちてゆくソルの断末魔がエコーがかって届いた。
 今日は12月24日。
 エルフへイムは水の星霊リヴァイアサンの降らす雪に銀世界へと変わっている。積雪の上に落ちたとしてもケガはないだろう。
「……寝よう」
 窓の外を冷たく一瞥したナギサはそう呟いて、まだぬくもりの残るベッドに戻った。

「恋人を驚かせようと思ったら、あんなひどい目に会うとは……」
 後日、仲間に大祭の日の出来事をそんな風に語るソルだったが、仲間達はまたソルの失敗談に偽装したノロケ話が始まったぞと、ニヤニヤしながら耳を傾けた。
 一方、同日違う場所ではナギサが友人に、やはり愚痴に偽装したノロケ話を語っていた。
「彼氏? (窓から)捨ててやったわ」

 この二人、実に似たもの同士である。
 リヴァイアサン大祭で二人の絆は、よりいっそう深まったようだ。
イラストレーター名:影月凍