■リヴァイアサン大祭2012『二人の一周年』
年に一度のリヴァイアサン大祭。その一日の間だけ出現する、雪と氷で形作られた宮殿、氷のダンスホール。
楽団の奏でる優雅な曲に合わせて、ダンスに興じるカップルたち。
温かい食べ物や飲み物の屋台が立ち並び、多くの客で賑わいをみせている中、そっと身を寄せ合う一組の男女が、優雅な演奏に耳を傾けていた。
「マヨリ、寒くはないですか?」
「篝火が焚かれているとはいえ、ここは屋外ですよ。ロゼッタさんの方こそ、大丈夫ですか?」
隣にたたずむ恋人に、気づかいの言葉をかけたロゼッタだったが、逆に自分の方が心配されてしまった。
ふとロゼッタは、自分の手に持ったマグカップを見つめて、妙案を思いつく。
「マヨリの分のホットミルクも、いただいてきましょうか? 身体が温まりますわ」
そう言うと、ロゼッタは、近くの屋台でマヨリの分のホットミルクを買い求めて、マヨリに手渡す。
「はい、どうぞ♪」
「あ、ありがとうございます」
マヨリは、差し出されたマグカップを、そっと受け取ると、嬉しそうにホットミルクを一口含む。
そんなマヨリの様子を、じーっと見つめていたロゼッタは、まだ何となく寒そうに思う。
「そうですわ♪」
再びの妙案に、ひとり呟いたロゼッタは、自分の首に巻いていたマフラーを、スルスルとほどいていく。
そのマフラーは、前のリヴァイアサン大祭の時に、マヨリからプレゼントしてもらった、大切な思い出の品だ。
「マヨリにいただいた、このマフラー。私ひとりで使うには長すぎると思っていましたの」
そう言って、ロゼッタは、ほどいたマフラーをマヨリと自分の首にクルクルと巻きつける。
「えっ?」
突然の出来事に、少し戸惑うマヨリだったが、ロゼッタの気遣いを嬉しく思って微笑んだ。
「これなら、ふたり一緒に温まれますわ♪」
「そうですね。これなら、ロゼッタさんの近くにもいられますし」
マヨリの言葉に不意をつかれ、頬を染めてうつむくロゼッタ。
「燐、煉、少しの間、遊んでおいで」
マヨリは、少しでも暖をとろうと召喚していた2匹の星霊バルカンに、少しの間離れいているようにお願いする。
主人の思惑を察した、2匹のバルカンは、尻尾を振りながら離れていく。
それを見送ってから、そっとロゼッタの手に自分の手を重ねるマヨリ。
自然と伝わる相手のぬくもりは、ふたりの心を通じあわせる。
「私たちが付き合い始めて、もう一周年……ですわね」
「そうですね。今年もまた、ロゼッタさんとこの日を過ごせて、とても嬉しいです。ハッピーリヴァイアサン!」
「私もですわ……ハッピーリヴァイアサン!」
来年のこの日も、また、ふたりで過ごせることを祈って、ふたりの唇がゆっくりと重なった。