■リヴァイアサン大祭2012『Starry fragment to you.』
窓の外、夜空からは金の雪が降り世界を彩る。愛おしい人と共に過ごす初めての冬。特別な日に贈りあうプレゼントはお揃いのピアス、そして新しいピアスホール。
どうせならと、一対を二人で分け合うのは、お互いを傍で感じられる様に。
リオは膝の上にシャンパネラを抱いて、彼女の顔へと手を伸ばす。
優しく頬へと触れた後、耳元へと移動させると手際良くシャンパネラへピアスホールを贈る。
右耳が鋭い熱を帯びて、愛おしい人の手で新しい印が刻まれた事を知る。
「ん……ありがと」
「次は、シャンパネラの番」
差し出されたニードルに、きょとんっとするシャンパネラ。その反応にリオもぽかんとした表情を返す。
やがて、彼の行動の意図を理解したシャンパネラは、とんでもないっと首を大きく横に振る。
「……無理無理無理。人の耳に穴開けるなんて怖いっ」
藍の髪を揺らして断るシャンパネラに、リオは至極楽しそうに微笑んで迫る。
「大丈夫大丈夫ー」
「そんなに穴空いてるのに何でまた開けるのっ!?」
怖いものは怖い。そう訴える彼女を嬉しそうに見つめるリオ。
珍しく本気で嫌がる彼女の姿が可愛らしくて愛おしい。他の人に穴をあけてもらう緊張など何処かへ行って、その可愛らしい反応をもっと見ていたいと、ついつい意地悪をしてしまう。
そして、断り続ける彼女の首を縦に振らせるには、無理強いよりも効果的な方法がある。
「……そっか、無理言ってごめん」
そう言うと、リオは残念そうに頭を垂れた。口許に浮かぶ微かな笑みを隠しながら。
(「……ずるい」)
押して駄目なら引いてみろ、でしょ。全くもう。私が断れない事を彼は良く知っている。
表情は見えなくとも、彼が微笑みを浮かべている事は容易に想像できる。それは、2人が長い時間を一緒にすごしてきた証。
小さな溜息を零し、しかたないなっと微笑むとしょんぼりと頭を垂れた愛しい人へと声をかける。
「……ほら、耳貸して」
シャンパネラは手を伸ばし、幾つも穴が開いた彼の耳に優しく触れる。
彼女だけの場所を贈る為に――。
「ありがとう」
リオは己の耳に鋭い熱を感じれば、望みを叶えてくれた彼女の額へと、感謝と愛情を込めて口づけを落とす。
見つめ合う二人に刻まれた新しい印には、小さな星がきらめく。それは、想い出のアイオライト。
煌めく星は今まで過ごした日々を胸に秘め、これからも二人が共に歩む未来を約束する道標となって灯る。
移り変わる季節を巡り、幾つもの年月が過ぎようとも、二人が紡ぐ道が別れることは無い。
終わることなき旅路を君と共に。