■リヴァイアサン大祭2012『仕度の時間、添えられた温もり』
一年に一日だけの大切な日。リヴァイアサン大祭に一緒に行こう。
そう約束していたキサとトウジュは出かける支度をしていた。
キサは前にトウジュからプレゼントされたブーツと、コートを纏う。
これさえあれば心も、体も暖かくて。
何より大切な人からの『贈り物』で、お揃いのデザインだからなのか、ただでさえそわそわする心も余計にそわそわして仕方がなかった。
ブーツもそうだけど、こんなに素敵なコートもプレゼントしてくれたトウジュさんにお礼を言わないと。
そう思いトウジュの方を見れば、キサがプレゼントしたお互いの目の色を意識した、黒地に紫のグラデーションのマフラーがコートに引っかかったらしく、四苦八苦している姿があった。
「トウジュさん。ちょっと動かないでくださいね……」
「おお、すまんな」
その白い手はコートに引っかかったマフラーを外して、少し背伸びをすると、マフラーを巻き直して整える。
よかった。マフラー、よく似合ってらっしゃいますよ。
声にこそ出さなかったが、嬉しそうにトウジュを見るキサの瞳はそう語っているのがわかる。
その様子を眺めるトウジュも、ただ嬉しかった。
キサにプレゼントした若苗色のコートに身を包んだ姿はとても似合っていたから。
「はい。できましたよ」
「おおきにな。ほなお返しに……」
慈しむように微笑むサキが好きだと言ってくれたトウジュの手がその白い頬に触れる。
「温もり、チャージや」
その手の温もりがキサの体にも暖かさをもたらす。
体の奥まで染み渡る温もりは熱く、お互いの熱が交じり合うのが心地良かった。
「ほな、行こか」
「はい」
手をつなぎ、部屋を出る二人。
外は寒く、雪も舞っているが寒さなんて些細なこと。
トウジュの、様々なものを作り出す魔法使いの手の温度が、手のひらの熱に込めた感謝と幸せと愛が、
キサの、パートナーにして最愛の人への思いが、この程度の寒さでどうにかなるわけがない。
「……有り難うございます。私の……」
言えないままのこの言葉をつぶやく。
今日こそはこの先に続く大切な言葉を……
愛する人の熱を間違いなく感じながら、キサは強く心に決めるのだった。