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2人でリヴァイアサン大祭

花酔パペッサ・アルカナ
できそこないの道化師・ラピス

■リヴァイアサン大祭2012『優しい夜に、貴女と二人で』

 12月23日の夜が過ぎ、日付は24日となった。
 暗い空にはリヴァイアサンが飛び始め、大通りは大祭の瞬間を祝う人たちでごったかえしていた。
「ひゃ! ととっ! アルちゃんちょっと待つでっすー!」
「こっち。こっちなの、ラピ」
 アルカナとラピスのふたりは混雑する大通りを抜けて小さな路地へと入った。
 深緑のリボンでゆったアルカナの髪が、ラピスをいざなうように裏路地の曲がり角へ消える。
 後を追い、暗い路地を抜けた先でラピスが目にしたのは、灯明に照らされる石造りの階段。
「ラピ、メリーリヴァイアサン、なのっ」
 夜の闇に浮かび上がった石段の上から、アルカナが微笑んだ。
 ラピスは見上げてから開きっぱなしの口を閉じ、石段に近づいてみた。星や月、太陽を模した古いランプが石の手すりに並び、興味津々のラピスを優しく照らす。
「こんな場所、あったのでっすねぇ……」
「わたしのお気に入りよ。……さ、上へ行きましょ」
 登りきった先の高台で、ふたりは町を見下ろした。通ってきた大通りや路地の家々のともし火が、まるで夜を飾り付けるかのように瞬いている。
 あの明かり一つ一つに、特別な『今日』が始まっているのだろう。
 それは、このふたりにも。
「あのね、これ、もらってくれる?」
 アルカナはそっと手すりに腰掛け、赤いリボンに飾られた小箱を取り出した。
 ……しかしいざラピスの目の前に差し出す体勢になると。
「その……、大したものではないのだけど」
 などと呟き視線を落とす、弱気なアルカナだった。
「わぁ! アルちゃんありがとう! 本当に頂いちゃってよろしいんでっすか?」
「ラピのことを考えながら、一生懸命選んだの。喜んでもらえたら、とってもうれしい」
 今度はラピスの目を見ながら言えた。
「大切に、大切にしますね」
 そう言ってアルカナの隣に腰を下ろしたラピスは、外衣の隠しポッケから綺麗な小箱を取り出した。
「なら、ボクからもプレゼントでっす、受け取ってくれますか?」
「わ、ラピ、ありがとうなの……。大切にするのよ」
 アルカナは受取った小箱を宝物のようにぎゅっと胸に抱いた。自分のために用意してくれているとは、思わなかったのだ。
 もう一度お礼を、深く深くお礼を言わなきゃなのよと顔を上げるが……口をついて出たのは、秘めた日ごろの想い。
「わたし、ラピの笑顔がとってもすき。いつまでもわたしのおねえさまでいて。ね、ラピおねえさま」
 普段は短く呼び捨てにするラピスを、甘えた声でおねえさまと呼んでいた。
 呼ばれたラピスは、自然な動作でアルカナをぎゅっと抱き寄せる。
「そんなこと言われたら、嬉しいじゃないでっすか。それに、こんなに好いてくださって、当たり前でっすよ」
 自分の腕の中で頬を赤くするアルカナに、彼女が好きと言ってくれた笑顔で言葉をつむぐ。
「アルちゃんはずっと、ボクの大切な妹でっす」
 『妹』は花咲くように微笑んで、『姉』を抱き返したのだった。
イラストレーター名:salada