■リヴァイアサン大祭2012『リヴァイアサン大祭の夜に』
粉雪の舞うエルフヘイムの夜の街並みは、行き交う恋人達の群れで賑わっている。今宵、そんな世界へと初々しくも加わったレイジュとユマも、揃って大祭へと繰り出していた。
賑やかな街を歩き、食事をしたり露店に並ぶ可愛い品々を眺めたりと、デートを楽しむ二人。
そんななか、とある商店の前でユマの足がぴたりと止まった。
どうやら、そこに飾られた一着の可愛いドレスに目を惹かれていまったらしい。
「……プレゼントしようか?」
じっとドレスを見つめるユマへとレイジュが気前よく声を掛けると、彼女は嬉しそうな顔で元気よく店へと飛び込んでいく。
しばらくして店内から姿を現したユマがその場でくるりとターンしてみせると、ドレスの裾がひらりと舞い上がり、雪降る街に一輪の緑の花が可愛らしく咲いた。
「えへへ……どうかな?」
そう尋ねるユマのいつになく照れた顔も、ドレスに負けないぐらいに可愛らしい。
「そのドレスの色、このエルフヘイムの都市とと同じだね……もちろん、とても良く似合ってるよ」
そう答えたレイジュが照れ臭そうに手を差し出すと、ユマも恥ずかしげに差し出された手を取る。
そして、仲良く手を繋ぎながら二人は再び祭りの夜を楽しむのであった。
多くの人々で賑わう祭りの夜であっても、やはり冬の夜風は肌寒い。
ほどなくすると、冷たい風に吹かれたユマが小さく身震いをした。
それに気づいたレイジュはユマの後ろへ回り、その冷たい手を包み込むながら、彼女をそっと抱きしめた。
瞬間、凍えていたユマの顔がぱっと赤みを帯びる。その理由は彼から伝わる温もりだけではない。
「レイジュ君、ほら、あそこにリヴァイサンが!」
照れを隠そうと空を見上げたユマの声大きくなる。つられて夜空へと視線を向けたレイジュは、そこに光り輝く水の星霊、『リヴァイアサン』の姿を見出した。
「……本当だ。僕は2年前にも見たけど、大切な人と一緒に過ごすお祭りは初めてだから、あの時とは全然違うものに感じられるよ」
レイジュは、自らの腕で包み込んだ愛しき人を更に優しく抱き寄せた。
ユマの顔はますます赤みを帯びるも、その温もりに身を委ねると恥ずかしげにそっと目を閉じる。
そしてレイジュも少し照れ臭そうに彼女へと顔に近付け、お互いの唇を優しく触れ合わせた。
気が付けば夜は更け、二人のまわりには静寂が漂っていた。
「えっと……そろそろ、行こうか」
レイジュの誘う声にユマは小さく頷きかえずと、二人は寄り添い合いながら古風な館へと向かう。
今夜は共に過ごす初めての夜。
だからこそ、二人は同じ朝を迎える事で愛を深めよう、と互いに決心していた。
そして、ここから始まるは、二人しか知らない甘い甘い秘密のひととき。
ユマとレイジュ、二人の愛に満ち溢れた時間はまだ終わらない。
――願わくば、この両名に聖霊リヴァイアサンの祝福がありますように。