■リヴァイアサン大祭2012『雪と、桜と、甘い熱』
空を見上げれば、闇の中から雪がひらひらと舞い降りてくる。待ち合わせの場所となっている公園には、まだガルデニアの姿だけ。
積もる雪が音を集めているかのように、夜の公園はひっそりと静まり返っていた。
ガルデニアは、冷たくなった手を温める為に口許にかざし息をかければ、白い靄が宙を舞う。
幾ばくもしないうちに、慌てた様子でガルデニアの元にメイが走ってくる。
編み物に夢中になっていて遅くなったと謝る少女にガルデニアは手を伸ばしそっと頭に触れれば、優しく撫でてあげる。
「売り物みたいに綺麗にはできなかったけど……」
遠慮がちに差し出された白いロングマフラーの目は若干不揃いで、拙い。
それでも、自分の願いを聞き入れて、慣れないながらも一生懸命編んでくれたその事がとても嬉しくて。俯くメイが微笑ましくて、愛しい。
ガルデニアは、受け取ったマフラーをくるりと自分に巻くと、残り半分を彼女の首へと巻いて。メイの小さな体を抱いて包み込む。
「あったかい」
1つのマフラーを2人で巻くだなんて、まるで恋人同士のようで。ガルデニアは照れくささを感じながらも、頬を微かに朱に染めて嬉しそうに微笑めば、同意を求める様にメイの指を両手で包み込む。
触れた彼女の手は冷たくて、ガルデニアの手のひらに収まるほど小さい。
この手が、白い糸から一針づつマフラーを編んでくれたのだと、その事を思い、嬉しさ、愛しさが募る。
「ん、暖かい……」
マフラーの完成度に満足いかず、しょんぼりとしていたメイだったが、彼の喜んだ表情を見て、沈んでいた気持ちが晴れて行くのを感じた。喜んで貰えた事が、メイにとっても嬉しくて、にこりっと微笑みを浮かべれば俯いていた顔を上げる。
「もう少し、一緒にいてもいい?」
優しく包んでくれる手を握り返しながら、メイは小さなワガママを零す。
ふっと視線を空へと向ければ、星霊リヴァイアサンがゆるりと泳ぐ姿が見える。
夜空から降り注ぐ雪は、地面へと触れると消えて行く。
――舞い落ちては消える雪。それが、何だかガルデニアと重なって見えて、メイは繋ぐ手にほんの少し力を込めた。
「来年も。雪、見られるかな」
視線は空を見上げたまま、少女は小さく言葉を紡いだのは未来への想い。
「さぁ、どうだろう」
メイの視線の先を追うように、ガルデニアも同じ空を見上げて雪を眺め、そしてメイへと訪ねる。
「雪が降らなくても、一緒に居てくれる?」
ガルデニアが紡ぐ言葉もまた未来への約束。メイが頷いてくれる事を期待しながら、言葉を紡いだ――。
夜の公園をのんびりとお散歩しながら、他愛も無いおしゃべり。
2人で過ごす時は、とても楽しくて素敵なひととき。