■リヴァイアサン大祭2012『偽装結婚式でご祝儀ウハウハ大作戦!』
実に『奇妙』な結婚式だと、招待客全員が同じ感想を覚えていた。「ああ、貴方に巡り合えてワタシとても幸せある……」
などと、ウェディングドレス姿の新婦はうっとり顔。
ただし、うっとりしてるのは新郎にではなく、ご祝儀の中身に対して。頬ずりでもしそうなくらいに勘定中。
「この金色の輝き、愛してるネー」
で、新郎の方はそんなのそっちのけ。立食パーティの肉料理に噛みつき貪り骨から肉をむしりとっている。が、むしりとるのは肉のみならず。
「ご祝儀よこせ」
「え? 先刻出しましたが」
「んな過去のこたぁ覚えてねえぜ。つーかわけのわかんねー事言ってる暇があったら、とっとと金出せ。無いたぁ言わせねえぞコラ。人の幸せなんだと思ってやがる」
などと、他者の幸せな気分を大いに害する口調で、高圧的な態度で迫る。
「あ、あのー……新郎新婦のお二人。そろそろ誓いの言葉を……」
おそるおそる、会場の司会進行役が声を掛けるが。
「やかましい黙れ。今来場者と親睦深めてんだから邪魔するんじゃあねえぜコラ」
「そうある。せっかくのご祝儀で幸せに浸ってるとこに、けちくせー横槍入れるんじゃねえあるよ。どうしてもってんなら金払え金」
そう言いつつ新郎新婦は、がつがつとごちそうを食い散らかし、ぐいぐいと酒をあおりながら、来場者全員にご祝儀をたかり中。
「……な、なんというか。今回のカップルは……」
最悪だという言葉を、ぐっと飲み込む司会。
しっかし、それでも新郎のタキシードは似合わない。筋肉質の体に、無理やり小さめのスーツを押し込み、ピッチピチになっている。
いや、新婦の方のドレスも、似合ってるとは言えん。なんだか連続凶悪犯罪者が、無理やりドレスを奪い着ているような、そんな錯覚を覚えてしまう。
「「ドロボーっ!」」
いや、それは錯覚ではなかった。なぜなら、スーツとドレスをそれぞれ奪われただろう男女が、下着姿でこの場に現れたのだ。
が、ドロボーと呼ばれたド最低の新郎新婦は、酒や料理、ご祝儀、でもって結婚式にと送られた贈り物各種をむりやりテーブルクロスに包み込み、トンズラ開始。
「へーっへっへっへ、このご祝儀はもらったあるね! 返してほしけりゃ金払えある!」
「……なるほど。で、捕まっていまここにいると」
牢屋にて。看守の言葉に、ビリーはギルニーを睨みつけつつ言った。
「そうある。くそっ、あん時にこのアホギルニーが肉を喉に詰まらせなけりゃあ……」
「あ? てめーが落とした十枚の金貨を拾おうとしたせいだろーがコラ」
「金貨十枚ったあ大金ある! そんな事もわからんかこのドアホギルニーがっ!」
「んだとぉ!? それ以前に、てめえドレスが全然似合ってねえだろうが。そんなんだからばれたんだよこのド間抜けがァッ!」
「タキシードパツパツの筋肉ダルマに言われたかないあるダァボ!!」
「……とりあえず、お前らが捕まった理由だけは分かった。バカだろお前ら」