■リヴァイアサン大祭2012『とわに、ともに、あなたと』
楽しげな声が溢れるリヴァイアサン大祭。その喧騒から離れた、純白の雪が降り積もる深い森の奥に2人の影があった。「1年、あっという間でしたわね……」
適当な場所に腰を下ろしたアミーシャが、口を開く。
「そうだな……」
アミーシャの隣に腰を下ろすフィードが、1年を振り返りながら静かに頷いた。
「覚えていらっしゃいます? 去年のこの日、わたくしは心底緊張していましたわ。生まれて初めてでしてよ。自分の意思ひとつで事を動かそうとしたのは」
アミーシャは正面を向いたまま話し始める。そこで一度言葉を区切って、横に座るフィードを見つめた。
フィードは、アミーシャを見つめながら無言で続く言葉を待つ。
「……1年一緒に居て、いかがでした?」
アミーシャが、柔らかく微笑みながら尋ねた。
「楽しかったぜ。嬉しくもあった」
フィードは微笑んで答える。
「やっぱり意識すると恥ずかしいけど、でもそれは別に嫌な恥ずかしさじゃなくてさ……なん、つーか……これが恋ってやつ? はは、1年たってもまだ慣れねえや」
最後の方は軽い苦笑が混ざっていた。「それは良かったですわ」とアミーシャがにっこり笑う。
「そういうアミーシャは、どうなんだ?」
今度はフィードから問い掛けた。
「勿論、フィード様と一緒になってから……世界が大きく変わりました。貴方様と一緒にいる事で、世界が違った色を見せて……そんな世界をこれからも変わらず、貴方様の隣で見られたら……」
アミーシャは微笑みながら、答える。本当に幸せそうに穏やかに。そして――、
「……わたくしを、これからもずっと、フィード様の傍らに置いて頂けませんか?」
真っ直ぐにフィードを見つめて微笑んだ。
「そ……それは、つまり……け、結婚……だよ、な……?」
その言葉に頬を染めたフィードが、少し落ち着かないように視線を彷徨わせる。
赤くなったフィードにつられて、アミーシャの頬もほんのり染まった。『結婚』という単語を出されると、やっぱり気恥ずかしくなる。
すっと真剣な顔になったフィードが立ち上がり、アミーシャの正面に来て、顔を向き合わせた。
「……本当に、俺でいいんだな?」
フィードの真剣な響きを帯びた言葉にアミーシャは、こくんと小さく頷く。
「結婚しよう、アミーシャ」
真っ直ぐアミーシャを見つめて紡がれる決意の言葉。
「……その言葉を、ずっと待っておりました。貴方様と永久に一緒になれる未来を、どれだけ待ち望んだか」
フィードを見上げるアミーシャの瞳から、一粒の涙が頬を伝わった。
――愛しております、フィード様。
深々と降る雪が肌を刺す。
しかし、2人に寒さは感じられなかった。