■リヴァイアサン大祭2012『黒竜と巫女の休息』
リヴァイアサン大祭。人々は思い思いの過ごし方をしており、自然と街はざわめいて。
ナナセは夫婦で二人きりで過ごしたいとウォリアと共に人里離れた温泉に赴いた。
「今宵は、月が一段と綺麗よな。まさに、聖夜と呼ぶに相応しく」
ちらり、ちらりと雪が舞う露天風呂に出て見上げれば、真円の月が淡い黄金の光を降り注がせ、街の喧騒は遠くここまでは届かない。
うむ、とウォリアは満足げに頷いた。
この星霊が夜空を泳ぐこの静かな夜、愛する者と裸の付き合いで絆を深め合うにいいと。
「なぁ、ナナセ」
と、姉さん女房であるナナセを振り返ると、嫁は存外に初心な反応を見せた。
「あ、改めて裸の付き合いと言われると、何かこっ恥ずかしいですよ……」
早速お湯を楽しもうと意見が一致し、いそいそと脱衣所で衣服を脱ぐ。
「あんま、見ないで下さい、ね?」
ナナセは玉の肌を隠したタオルを巻き直し、まずはかけ湯をしてから湯に浸かった。
今年は色々なことがあった。
ウォリアと共に思い返す。辛いことも楽しいことも、二人で乗り越え前に進んできた。
「今年も一年、お疲れ様でした」
「お互いにな。だが、まだまだ未熟な拙者では、ナナセに苦労をかける事もあろう」
そんなことないですよ、と微笑むナナセを見詰めながら来年は嫁が目を見開くほどに成長してみせたいと思うウォリアだった。
「お背中流しますよー」
「ああ、頼む」
ふとナナセは気付く。
彼の腕や脚や胴等に残る、彼が戦場で負った傷のひとつひとつを見るにつけ、それは彼の目に見えない努力の証であると。
そして、自分が彼にどれだけ守られていたかを改めて知ることとなった。
この背中は何と誇らしい。
逃げ傷が一切無い大きな背中。
丁寧に石鹸で泡立てたタオルを使いながら、広い背中を流す。
「……ぐるるるるぅぅ」
あまりの気持ちの良さにウォリアは思わず唸り声を上げてしまう。
記憶にある限り、誰かに背中を流してもらうのは初めての経験だ。
苦楽を共にしたからこそ成長できたし、過ぎた時間を振り返れば胸が痛むこともあり、経験を積んだが様々な垢に塗れたから、その穢れを二人で流し清めてしまうのだ。
ナナセが、そっと背中から抱きついてきた。
「……ありがとう、ね。大好き」
溢れる感謝と愛の言葉を囁き、ウォリアに何か言われる前に照れ隠しに彼の耳朶にかぷっと甘噛みした。
「まだまだ、夜は長い。穢れを落としてゆっくりと温まって、新しき年に想いを馳せようぞ」
「そうね、長い夜に備えて、まずはのんびり温まりましょ?」
身ぎれいになったら二人で湯に身体を沈め、のんびり温泉三昧。
間もなく新しい年を迎えるにあたって、夫婦水入らずのこんなひとときもいいものだ。