■リヴァイアサン大祭2012『雪舞う夜』
冬の野を駆ける2つの影があった。大きな影が、ついてくる小さな影を気遣いながらより高い大樹を目指していた。
辿り着いた大樹に、時間が惜しいとばかりに2人は登り始める。
「エルス、足元気をつケテな」
兄のズイヴェンが妹のエルスに手を差し出す。安全な足場を探しながらゆっくりとエスコートして視界のいい上層へと登っていく。
エルスもゆっくり付いていき、兄とお揃いの雪色のコートを汚さないように気をつけている。
苦手な高いところだが兄が守ってくれているという安心感でちゃんと上れている。
今日はリヴァイアサン大祭を控えている。もうすぐ、空を星霊が泳ぐだろう。それまでにより近い場所でそれに近づきたいのだ。
「……うっ」
しかし急ぐうちにエルスはつい下を見てしまう。眩暈がしてふらつくがすぐにズィヴェンが支える。
「ほら、オイデ」
危なげなく安全な足場を探して先を登っていく。
次第に険しくなっていくが関係ない。
エルスはズイヴェンを信じているし、ズイヴェンはけしてその信頼を裏切ることはない。
兄妹はゆっくり確実に大樹を登りゆく。
大分上に来たと2人で残りを確認しようとした。
その瞬間に、光が降り注いだ。
雄雄しく空に輝くリヴァイアサンの光と、降り注ぐ雪が世界を包み込む。
「空に、こんなに近くて……手を伸ばせば、りわーさんに、届けそう……」
幻想的な光景に視線を逸らすことができなくなる。
この瞬間の美しさは恐らく一生忘れないだろう。
「何度見ても、イイモンダ……」
故郷の空を流れる星霊の姿は変わらず素晴らしい。
見られてよかったと、心から思う。
「雪も降ってキタから早く上行こうか」
着いタら、用意した菓子デモ食いながらのんびり眺めようぜとエルスを励ます。
それにエルスは頷きを返し、残りの道行きを危なげなく進んでいく。
その間にも降る雪と光は2人の姿を暖かく見守っている。
そのおかげか2人は無事に一番上にまで到着することができた。
「ヨクデキマシタ」
ズィヴェンは愛しい妹を撫で、それにエルスも嬉しそうな微笑を返す。
少し恐いのか兄にしっかりとしがみ付きながら、持ってきたお菓子を広げ寄り添いあう。
年に1度の特別な日。
幻想的な冬の光景の中、2人はゆっくりのんびりと空を見上げるのだった。