■リヴァイアサン大祭2012『素敵な一日を貴方と一緒に…』
どの位かな。この人を好きになって、どの位かな。
去年のクロノス祭での告白では、「まだ恋人としては見られない」と言われたけど。
自分がまだ子供なのは百も承知。だからこそ、身も心も素敵な大人の女性をめざし、一年間頑張ってきた。
「ねえ、ウェンディの森に行きません?」
こうしてお誘いしたら、来て下さる。
けれど……。
タリスカーさんの目には、私……シンシアは、どう映っているのだろう。
まだ幼い、少女のまま? それとも……少しは成長した、魅力ある女性?
できれば……少しでいい。女性として、見てほしい。
ウェンディの森。
リヴァイアサン大祭のこの日に、絶対タリスカーさんと一緒に見たかった。
目前に広がる光景は、期待に違わぬ素晴らしいもの。
ぎゅっ。
「……はわっ! わ、私……」
いつの間にか、体ごと……彼の腕に抱き着いている自分がいた。
大慌てで手を離すも、体が熱い。耳も、熱を帯びていくのを実感する。
……きっと、今の私の顔は、真っ赤なのだろう。
けど、タリスカーさんはそれに対し……優しく微笑んでくれている。
「そ、そうだ! 今年もマフラー編んだんです」
なんとかごまかそうと、混乱した頭で、わたわたとマフラーを取り出した。
「少し、長いですけど……良かったら使って下さい!」
「おっ、ありがとう。ちょうど寒かったんだ」
良かった……。
「私が、かけてもいいですか?」
気づくと、自分の口がそう言っているのに気付いた。
そして、腰を屈めた彼の顔が、すぐ近くに。
「あ、あぅ……」
恥ずかしさとともに……私は、マフラーを彼の首にかけ、巻き付けた。
「帰るまでの短い間だけど、一緒に使うかい?」
時間が経ち、帰宅しようとした時。
タリスカーさんから、そんな言葉をかけられた。
「え……えぇっ!」
彼はマフラーの余り部分を示し、一緒にと誘ってくれてる。
「使います!」
そう返答した私は、彼の服を掴んで寄り添い、マフラーの余った部分を自分の首に巻き付ける。
嘘みたい……。
別れるまで、私は……彼の顔を見て、頬を染めて俯き……でも見たくて、顔を上げて、そして俯き……。それを繰り返していた。
けれど、別れの時間はすぐに。
「それじゃ……おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
去り際。
はっきりとわかる。胸の中に広がっている……心残りな気持ち。
「……あ、あの!」
「ん?」
気持ちは、胸いっぱいに広がり……。
「タリスカーさん! 大好きです!」
答えていた。想いを、告げていた。
途端に、恥ずかしさが襲ってきた。それが、私の身体を襲う。
そして、不安も。
去り際に、こんな事を口にするなんて……。はしたない子って思われたら……。
それ以上は、何も考えられなかった。ただその場から、離れたかった。
けど、走り去る間際。
タリスカーさんが、何か言っていたようだったけど。その時の私は……それに気づいていなかった。