■リヴァイアサン大祭2012『Ehezeremonie』
「……」ケントは舞い降る雪の中、月光に照らされた純白のドレスを纏う最愛の人に見惚れながら跪く。
――つい先日の22日、付き合って1年を迎えた日に結婚を決め、今日という特別な日に二人きりで結婚式を挙げる事にした。
「……っ」
急に跪かれて、何事かと驚くヨギを、ケントが真剣な眼差しで見つめる。
「――病める時も富める時も共に」
静寂の中にケントの声が響いた。そこで一度言葉を止め、ただじっとヨギを見つめる。
(「弱い自身のせいで、いさかいも多く、中途半端な覚悟だけど……」)
一呼吸おいて、
「傍に居たいから。お前の生まれた特別な日に永遠を誓う」
しっかりと誓いの言葉を続けた。
頬を染めながらも、真っ直ぐなケントの眼差しをしっかり受け止めるヨギ。
「……」
(「きっと喧嘩だってたくさんするし、辛いこともあるけど……」)
ヨギは、覚悟を決めるように、一度だけ瞳を閉じ、再び開かれた瞳にケントを映す。
「……命ある限り、真心を尽くすことを誓います」
真っ直ぐケントを見つめて、はっきりと誓った。
(「大好きだから、ずっと傍にいられますように……」)
そんな願いを込めた誓いを。
ケントは、ヨギの肘上まである長い白い手袋を嵌めた右手を静かに取り――手の甲に誓いのキスを落とした。
「……」
顔をゆっくりと上げたケントの目に、頬を染めて恥ずかしそうに、でもそれ以上に嬉しくて幸せそうなヨギの顔が映る。
「……」
ヨギは、顔を上げたケントの目と合い、恥ずかしさが強くなって、更に顔を赤くした。
すっと立ち上がったケントは、纏っていた――ヨギから誕生日にプレゼントされた黒灰のロングコートを脱ぎ、寒そうな花嫁の肩にそっと掛ける。
「――このままお姫様抱っこで帰るか?」
ケントが冗談めかして軽く笑った。
「……ばか」
ヨギはそっけなく、ふいっとそっぽを向く。肩に掛けられたぬくもりを嬉しく思いながら。
――月が照らす雪の夜空を、リヴァイアサンが2人を祝福するように舞っていた。