■リヴァイアサン大祭2012『星夜共宴 ‐Bonds von Silver‐』
エルフヘイムのとある銀細工店。看板は出ておらず、入り口は鍵がかかっているのに、中からは明かりと楽しげな声が漏れていた。「弟子と帰郷シタ時は、店に連れて来ようと決めテたんだ」
ズィヴェンは食事やケーキの並べられたテーブルにワイングラスを運びながら口を開く。
(「ややあ……」)
リーフは瞳を輝かせてキョロキョロしていた。初めて連れて来てもらったズィヴェンの店は、目に入る全てが好奇心をそそる。
「サァ初めようぜ」
ズィヴェンが上等な貴腐ワインの注がれたワイングラスを1つはリーフに渡し、1つは手に持って少し掲げた。
「は、はい!」
隅々まで掃除して探索をしたいとウズウズしていたリーフは、その声で我に返り、渡されたグラスを持つ。
――チン!
お互いに持つグラスが軽く打ち鳴らされた。
リーフは早速ケーキを頬張り始める。それをズィヴェンと似た帽子を被る子パンダが、じっと見つめていた。気付いたリーフは「欲しいのかい?」と楽しそうに突く。
「イジメンナ」
頬杖をついて眺めていたズィヴェンが、軽く笑いながらリーフの頬を突いた。
「むぎっ。苛めちゃいないですよう、苛めないでくださいよう!」
リーフは「嗚呼ほらパンダも抗議してる」と付け足して笑う。――狐面の子パンダがズィヴェンを真似ていたのだ。
子パンダ達の可愛らしい仕草にすっかり和む2人。ズィヴェンが「美味い?」と自作のヴルストの感想を聞けば、「そりゃあ勿論! 幾らでもいける程美味で!」と満面の笑みでリーフが答える。
「ケーキ喰いタい。食わセろ」
ズィヴェンがリーフのケーキをじっと見た。
「そんな悠長な事云ってると無くなって仕舞いますよ?」
さっきもう半分以上一気に食べてしまいましたから。と、リーフが意地悪く笑うと、ズィヴェンが少しだけムスっとする。
「うふふ 何て、はいどーぞ!」
リーフがケーキ乗せたフォークをズィヴェンの口の中へ運んだ。
「…ナァ、リーフ」
ケーキに満足したズィヴェンが何気なく口を開く。
「お前、俺を師匠と呼ぶノなら、銀細工、本気デやってみるか? タダシ。厳しくスルからなー」
悪戯っぽい笑みを浮かべながら続けた。
「ん、え? ……それって、僕をホントの弟子として認めてくれるって事ですか?」
リーフは目を丸くして驚き、クリーム拭うように口元を押さえた。――嬉しさにへらへら緩む口元を隠すために。
「――厳しいのは慣れっこで、望む所ですよ師匠!」
あまりの嬉しさに、ずいっとズィヴェンの方へ身を乗り出して笑顔を広げる。
「ナラちゃんと教えルから、勝手にふらふら離れンなよ」
悪戯っぽい笑みを和らげたズィヴェンが、リーフの髪を優しく撫でた。