■リヴァイアサン大祭2012『虹色琥珀に願いをかけて』
指輪、ピアス、ネックレス、ブレスレット……華やかに美しさを競うアクセサリー達。そのどれもに宝石の輝きがある。白さの強いもの、取り分け深い色合いのもの、1つ1つそれぞれ違った表情を見せている宝石。これら全てには、七色に煌めく樹脂から作られる『虹色琥珀』と呼ばれる同じ宝石が使われていた。
(「……これにしましょう」)
どの色合いのものが彼女に似合うかじっくり見定めていたローラントは、その中の1つを手に取った。
「ファラーナ……」
小柄なファラーナの前で片膝をつく。その手を取り、細い指先に先程選んだ虹色琥珀の指輪をそっと嵌めた。
「私の今の気持ちをこの虹色琥珀にして貴方に贈ります」
ローラントは顔を上げて、ファラーナの瞳を真っ直ぐ見つめて口を開く。
「……ローラント……」
指輪を嵌めてくれたローラントの手の温もりに、ファラーナの表情は嬉しそうに和らいだ。
「様々な色に輝くこの琥珀は、愛らしくくるくる表情が変わるあなたにふさわしいと思います」
ローラントはそこで一度言葉を区切り、柔らかく微笑む。そして、一度深呼吸をし、
「いつまでも初心を忘れずに新鮮な気持ちで、貴方と一緒に歩いて行きたいと思います」
固い決意を宿した瞳で、しっかりファラーナを見つめて言葉を紡いだ。
「勿論、わたしも同じ気持ちだよ」
普段は騎士らしくあろうと凛々しい言動の目立つファラーナだったが、愛する人からの嬉しい言葉に、にこっと少女のように笑う。そして、
「このブレスレットの組み合わせのように、一緒にいようね」
銀と虹色琥珀のブレスレットを差し出した。この銀と虹色琥珀のようにずっと一緒にいよう、と。贈られた指輪のお返し――になってしまったが、ファラーナもローラントにプレゼントをしようと思っていたのだ。
「ローラントはとてもしっかりしてるけど、一人で抱え込まないで。私はいつも貴方の傍で剣として道を切り開くから……このブレスレットはその証です」
ローラントの瞳を真っ直ぐ見つめ返すファラーナ。
「貴方のすべては私のもの、私のすべてはあなたのものです」
ローラントは立ち上がり、優しく微笑んでファラーナを抱きしめる。そのまま静かに唇を重ねた。ファラーナは嬉しそうにキスを受け入れ、その背に腕を回す。
唇から伝わる互いの温もりをしっかりと感じ合い、ゆっくりと体が離れた。
「さぁ、行きましょう」
ローラントがファラーナの手を取り、踊り場へと誘う。
2年半の歳月を一緒に過ごし、愛する心を育んできた2人にこれ以上の言葉は不要だから――。