■リヴァイアサン大祭2012『雪見』
――ちゃぷん。もわもわと温かな湯気を立ち上らせる露天風呂。
「絶景ッスね〜」
温かな湯船に浸かり、アリスが歓声を上げた。遠くに見えるお祭り特有の華やかな灯りと舞い振る雪。
――今宵は年に1度のリヴァイアサン大祭だ。
「そうだな」
歓声を上げるアリスから少し離れて、静かに湯船に足を入れたツバキが夜空を見上げ呟く。凛とした張りが感じられる声。
「キレーな雪……ツバキさんの肌も雪みたいに真っ白でキレーッスね〜」
夜空に舞う雪を眺め、ツバキを振り返って、にこっと笑うアリス。
裸の付き合い――と言っても、お互いに水着を着ているのだが、少ない布地に露出しているツバキの肌は雪のように白い。肩にかかる紫の長い髪と赤い瞳が良く映える。
「なんだ、褒めても何も出ないぞ。それに、あまりじろじろ見るなよ」
ツバキは苦笑して視線を逸らす。その頬がうっすら赤らんでいるのをアリスは見逃さない。
空気は冷たく、湯に浸かっている体は温まっても、顔は冷たい筈なのに。
(「どう考えても照れ隠しッス」)
アリスは、くすりと小さく笑うと、
「ふふ、嬉しいクセにぃ。……そこがツバキさんの可愛いとこなんスけど」
笑ってぴったりと身を寄せた。そのまま抱きつくように体を預ける。
(「もうツバキさん可愛いなぁ」)
そのままツバキの肩口にアリスが甘えるように頬ずりをした。湯に温められた肌は温かく、柔らかい。
「……っ」
ツバキは、何か言い返してやろうと思い口を開くが、そのまま黙ってしまった。
(「……まぁ、温かいし……」)
触れ合う肌が心地良いのは否定しようがない。そして、目に映る雪景色も美しい。
「どうしたんスか〜?」
アリスは、ツバキの肩に頭を乗せた状態で、楽しそうに下から赤くなっているツバキをにやにやと見上げる。
「……雪……綺麗だな……」
夜空を見上げるツバキの表情が先程より随分柔らかくなっていた。
「そうッスね〜」
アリスも夜空を見上げて幸せそうに笑う。
お互いに感じ合う心地良い温もりを感じながら――。