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2人でリヴァイアサン大祭

獅子奮迅・レオン
守りの誓い・ブライアン

■リヴァイアサン大祭2012『祭りの夜の温泉で』

「男同士で気兼ねなくのんびり雪を見るってのも乙だな」
 湯煙の中、「肩が凝らなくていいぜ」と続けるレオンの声が響いた。
「そうだな」
 ぐいっと、猪口と呼ばれる陶製の器をあおったブライアンが同意する。
 今日はリヴァイアサン大祭。星霊リヴァイアサンが空を舞い、一日中雪が降り続き、泉が温泉に変わる日。「その日に現れる温泉で雪見酒ってのも風流じゃないか」と、頭の上に手ぬぐいを乗せた男2人は、酒盛りに興じていた。舞い落ちる雪だけを肴にした酒盛りに。
「いや、お前さんがいるから、くつろいでんのかもな」
 レオンは、盃と呼ばれる漆器製で中心がくぼんだ皿状の器を傾ける。
「あちこちの都市国家に辺境の荒野、遺跡の数々を旅してきたが、最後に頼りになんのは自分だって俺ぁ思ってた」
 旅してきた場所を思い浮かべながら、空を見上げたレオンは続けた。
「誰かに相棒と呼ばれるなんざ考えても見なかった。……なんで俺を相棒に?」
 自分が喋り終わるまで口を挟まなかった横のブライアンを見て問う。
「死なせちまったマスターはか弱い少女だった。だからスカードなんて、みんなひ弱な奴らだと思ってた」
 問われ、ブライアンは正面を向いたまま、ゆっくりと口を開いた。「みんなを守って」という最初で最後の願いを口にした少女を思い出して、小さく苦笑する。
「だがよ、どう考えても守ってやる必要性のないスカード……つまりお前を見てよ、守る守られるだけじゃなく背中を預けあえる間柄もいいもんだな、と思ってよ……」
 ブライアンはそこで一度言葉を止めた。湯に浮かぶ盆に乗せた酒を猪口に注ぎ、ぐいっと一気にあおる。
 黙ってブライアンを見ていたレオンも盃をあおった。
「だから「俺のマスターになってくれ」とは言わねえが……」
 照れくさそうに頭をガリガリ掻くブライアン。
「ま、これからも相棒でいてくれや。なあ?」
 ずっと正面を向いて温泉に舞い落ちる雪を見ていたブライアンが、横のレオンに顔を向けて、照れを隠すように豪快に笑いかけた。笑いながら、ぐいっと猪口の中身を一気に飲み干す。
「あぁ!」
 力強く頷いたレオンも盃を飲み干し、盆の酒をブライアンに酌をして、自分の盃にも注いだ。
 大分酔いが回ってきた2人は、筋骨隆々の逞しい肩を組み、くだらない思い出話に華を咲かせる。「そんなこともあったか」と、お互いの背をバンバン叩いて豪快に笑い合った。そして、音程の狂った歌が響く。
 どこか成長しきれない少年のようなところが心根に残った中年2人。
 雪見酒の風流は何処へやら――だが、それがかえって二人には相応しく、また楽しい。
 そんな祭りの夜だった。
イラストレーター名:玉英