■リヴァイアサン大祭2012『ふたりで happy Leviathan』
「えっと……似合ってます?」シラネが見立てた振袖を着付けてもらったアトラ。
いつもと違う雰囲気になった少女はシラネの前でくるりと回り、すこし照れた笑顔を浮かべて見上げる。
そんな愛らしいアトラの頬をシラネはそっと撫で。
「よう似合っておるよ。艶やかならずとも、華は華なればな」
「あ、ぅ、その、ありがとうです……」
真っ赤になったアトラは、照れ隠しに急いで戸口へ向かう。
扉を開けると、空からは静かに雪が降っていて。
「わぁ……っ! 雪! 真っ白です〜♪」
「そんなにはしゃぐと転ぶぞ……」
大丈夫、子供じゃないんですから。そう返そうとした矢先、慣れない着物と雪で足が滑り視界が反転する。
「わ、わわっ!?」
「そらみたことか」
気が付けばシラネに抱き留められている自分。
やれやれ……と、残念な子を見る様な表情にしょんぼりしてしまう。
「――」
アトラのその姿に悪戯心を起こしたシラネは、不意をつくように唇を少女の頬に近づけ――。
(「きゃぅ! キ、キスーっ!?」)
「うぅ……ふ、不意打ち……ずるいですっ!」
「よう注意せんと、いつなんどきに何があるやも知らんからな?」
恥ずかしさで染まった頬を膨らませて抗議するアトラ。
けれど、シラネの方はイタズラの成功に満足げに微笑み。
『いつもの事』と、楽しそうにアトラの頭を撫でるばかり。
(「むぅ……勝てない、です……いつも、からかわれてばかり……」)
それでも、こうしてたわいのないやり取りをシラネとするのが大好きなアトラなのだった。
「――それじゃあお嬢様、お手をどうぞ。エスコートさせていただきます」
「ふぇ? あ、は、はいっ、よろしくお願いしますっ!」
茶目っ気の混じった笑みを浮かべて一礼してみせるシラネ。
その様子に面くらいドギマギしつつも、アトラは差し出された手を取る。
そうして二人、手を繋いで祭りで賑わう街へ出かけるのだった。
お互いに、合わせた手のひらのぬくもりを感じながら――。