■リヴァイアサン大祭2012『恋の降り積もる街で』
それは、リヴァイアサン大祭の白雪がしんしんと降り注ぐある夜のこと。「いけないいけない、すっかり遅れちゃったよ〜!」
金のショートカットが愛らしい少女、エリアがレンガ敷きの道を走っていた。
彼女は今、心から大切な人と待ち合わせていた。けれど、その前に沢山の人にプレゼントを贈るのに忙しく、それに時間がかかってしまい少し遅れてしまっていたのだった。
彼は優しいからきっと、怒ったりしないで優しい言葉で迎えてくれるかもしれない。でも、やっぱりこの寒空の下で待たせるわけにはいかないから。
はやく急がないとね。
その一方で、一足早く待ち合わせの場所で待っていたウィーネは、白雪が降り注ぐ夜空を見つめていた。
「……」
曇っている空はあまり好きじゃない。灰色の雲で覆われたどんよりとした空は何だか息苦しいし、閉塞感に似たもので心が塞がるような気がするからだ。
けどそんな曇り空も、今日は特別に綺麗な雪を降らせてくれた。だからウィーネは、たまには悪くはないかなと思いながら、大好きなエリアを待ち続けた。
それからしばらくして、ウィーネが待つ場所にエリアが駆け込むようにしてやってきた。
「ごめんごめーん。待った?」
待たせたことを少し悪く思いつつも、茶目っ気のある表情でウィンクしてエリアは謝ってみた。
するとやはり、ウィーネは温かな微笑みを浮かべながらエリアを迎えてくれた。
「大丈夫、ちょっと前に着いたばっかりだから」
元気付けるようなウィーネの微笑みに、つられるようにエリアもにこりと笑うと、手を繋いで一緒にレンガ敷きの街道を歩いていった。
「えへへ、あたし、雪の音が大好きなんだー。こう、一歩一歩踏みしめるみたいなー?」
レンガ敷きの街道には少し雪が積もり始めており、エリアはわざと音を立てるようにして歩いていた。
「こうやって、二人で歩いて愛を踏み固めるんだなあって」
少しませた事を言ってみてエリアは思わずくすりと微笑み、ウィーネも口の端を緩ませながら頷いた。
「そうだね。雪って綺麗だし何でも覆ってくれる、冷たいけど優しいよね」
ウィーネはそう言いながら、小さなエリアと足並みを合わせて更に雪の道を歩いていく。
こうしてしばらく歩いていると、お目当てのショコラ専門店が見えてきた。
「ほらっ、早く早く。ウィーネ、行こっ?」
目的の店が見え、目前の楽しみにエリアは興奮気味にウィーネの手を強めに引っ張った。
「大丈夫だよ、お店は逃げないんだからー!」
そう言いながらも、ウィーネはエリアの手に引かれながら更にお店に近づいていった。
こうして一緒に繋ぐ手が、この寒さの中で何よりも温かかった。手のひらを通して大切な人の心に触れているみたいだった。
それはきっとウィーネも同じはず。
これから先も、ずっとずっと、こんな風に仲のいい恋人でいられたらとっても幸せなんだろうな、とエリアは思いながら、お店に入っていった。