■リヴァイアサン大祭2012『カマクラ作りましょ♪』
上空を龍のごときリヴァイアサンが駆けまわる。その雄姿を見上げるキキョウは、可愛らしい鼻からフンフンとやる気あふれる鼻息をもらしていた。「雪……でござるな、アルバ殿」
「はい、とっても綺麗ですねぇ」
一方で隣に立つアルバは、女子と見まごう可憐さでしんしんと降る雪を見つめていた。
白い息を吐いて、キキョウがアルバの顔をうかがう。
「……雪といったら、どんな事をしたいでござるか?」
アルバはしばし返答に窮した。こちらをうかがうキキョウの様子が、尻尾でも振らんばかりに期待に満ちたものだったので。
ソリ遊び? 雪合戦?
彼女はどんな答えを待っているのだろう?
「雪……だるま、ですかね?」
自信なさげに答えたその言葉尻を食う様に、キキョウが拳を固めて力説する。
「いやっ! ここはカマクラを作るべきでござるよ!」
大祭はパートナーとの絆を再確認する特別な日。巷では絆の証にプレゼントを贈る者も多いという。
ならば自分は城を……!
戯れ遊びなれども、アリバ殿を一国一城の主にしてあげたい!
キキョウは主に、カマクラという名の白亜の城をプレゼントするつもりなのである。
「カ、カマクラですか? う〜ん」
とっぴな発言に苦笑いするアルバだったが、彼女はすでに道具まで用意してやる気満々だ。
「……そうだね、作ってみましょうか!」
完成するかはわからないが、やるだけやってみよう。華奢な手にスコップを握り、雪をしゃりしゃりと集めはじめるアルバ。
一方キキョウは意気揚々と武骨なシャベルを振るい、大量の積雪を宙に舞わす。主のために〜っと熱中している。
「ふぅー……ひと段落着いたでござねアルバ殿。……あれ? アルバ殿は??」
なだらかな雪原だった周囲は、雪を掘り返したために凸凹だ。その凸の一つが、弱弱しい声とともにポコッと崩れ、顔を出したのは……。
「ア、アルバ殿ォォオ!?」
氷壁KOされたかのようなアルバの姿であった。
「ほんっとォ〜に申し訳なく……うう、拙者の飛ばした雪のせいで……」
カマクラの中央に置かれた七輪が、餅をプックリ膨らます。風雪を遮るカマクラ内は炭火の熱で暖まり、アルバもすっかり体温を取り戻していた。
「もう気にしないで。それよりすごいですよキキョウさん」
「うう、へ? 拙者が?」
「こんな立派なカマクラを一人で作っちゃうなんて!」
アルバが目覚めたのはついさっきで、気付いたら暖かいカマクラの中にいたのだ。
「り、立派……。し、城の如くでござろうか?」
「城? ふふ、壁も厚いし、そうお城みたいですね」
そう微笑むアルバに、キキョウはやっとしょぼくれた顔を笑顔にかえた。
餅を二人で美味しく頂いた後、キキョウはウトウト寝てしまった。カマクラ作りがこたえたのだろう。
自分の膝の上でスヤスヤ眠る彼女の髪を、アルバは愛猫の背をなでる様にそっと櫛付ける。
失敗もあったが、おかげで二人の絆は以前より深まったようである。