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2人でリヴァイアサン大祭

晴れの日も雨の日も・クロッカス
信天翁・パスカル

■リヴァイアサン大祭2012『二人で奏でる音楽と人生』

 年に一度のリヴァイアサン大祭。この村でもまた、大祭を祝う祭りが開かれていた。
 空の星霊を愛でながら人々は飲み、食い、音楽を奏で輪になって踊る。
 その輪の中に飛び入り参加したのは、パスカルとクロッカスだ。それぞれ手にしたギターをかき鳴らしながら共に踊る。
 時には他の人たちと一緒に曲を演奏し、時には二人のギターの音に合わせて皆が踊り。
「君に習っているギターも、大分うまくなってきたかな?」
「ふふ、二人で奏でるメロディも綺麗な和音になって嬉しいね!」
 クルリと回ってパスカルが問えば、楽しそうにクロッカスが笑った。
 誰かの歌声に手拍子が重なり、笛の音が主旋律を奏し、打楽器がリズムを刻み、そして二人のギターが曲を支える。
 知っている歌もあれば知らない歌もあったり、見事な踊りを披露する者がいればおぼつかない足取りでステップを踏む者もいる。
 たくさんの声、たくさんの音が混じり合い、祝いの音色を奏でていった。
「音が一つの音楽になるみたいに、二人でまた一年、一つの家族を作って行きたいね」
 音色の中、雪を纏って微笑むクロッカス。
「お互いが想い合っていけば……大丈夫、幸せはいつまでも続くよ!」
 ランプに照らされたパスカルが微笑み返して答えた。
 二人の音は溶け合い、大祭を彩る喜びの音楽となる。
 時が経つにつれ、人々が集い、輪は大きくなっていった。やがて熱気が最高潮へと昇り詰め、最も盛り上がってきた頃合いで。
 パスカルとクロッカスはそっと祭りを抜け出した。

 しばらく後、二人の姿はとある墓の前にあった。
「父さん、母さん……私、大切な人ができたんだよ」
 言ってクロッカスは墓前にしゃがみ込む。そこは、彼女の両親が眠る場所だった。
「お父さん、お母さん、初めまして。パスカルと言います」
 一礼して、手にしていた白菊を墓へと手向けるパスカル。その横にクロッカスは自作のパンプキンパイを二切れ供えた。
「それから、自分の畑もできました。この南瓜、うちの畑で採れたんだよ」
 昔を思い出しながら、亡き家族へと語りかけるクロッカス。その瞳には涙が滲んでいた。
 けれどそれは悲しみの涙ではないことを、二人は知っている。
「父さんと母さんが望んでくれた以上に、幸せになるよ! だから、見ていてね……」
「これからも……俺の一生を掛けて、大切にしていきますから……」
 想い合える人に出会えた嬉しさ。幸せだと報告できる喜び。この涙は、その証。
 濡れた目をして立ち上がった彼女の手を想い人がそっと握る。
「だからどうか、安心して、見守っていて下さい」
 リヴァイアサンの舞う日。遠くで祝いの音が輪となる夜に。
 パスカルは、天にいるだろう愛する人の両親へと誓った。
イラストレーター名:光田まみ