■リヴァイアサン大祭2012『パーティを抜け出そう!』
年に1度のリヴァイアサン大祭。この日はエルフヘイム各地で様々な催しが開かれていた。ここはフォーマルなパーティ会場。
普段は動きやすい服装を好むリセリアもドレスに身を包む。お気に入りの赤い薔薇の髪飾りに合わせて薔薇をあしらった真っ赤なドレス。頭にはティアラを乗せて、お姫様のように。
少しだけ背伸びをするお姫様をエスコートする貴公子は黒いロングコートを纏うヴィンツェンツ。胸元には金細工のシンプルなブローチ、腰には魔鍵の武器飾りである紫の薔薇が華やかさを添える。フォーマルな会場にもすんなり馴染んでいるのは貴族の生まれだからだろう。
(「ドレスは窮屈だな……パーティも退屈……。せっかくの日だし、二人きりで過ごしたいな……」)
リセリアはちらりとヴィンツェンツを見た。
「?」
リセリアの視線に気付いたヴィンツェンツが穏やかな瞳で微笑む。
「ヴィン君、抜け出して一緒にどこか行こうよ」
リセリアはパァっと笑うと、ヴィンツェンツの手を引いてバルコニーへと駆け出した。
「え……」
その笑顔と勢いに圧倒されて、手を引かれるままヴィンツェンツも小走りになる。
「そんなに走ったら危な……」
「きゃ……っ」
ヴィンツェンツの言葉が終わらないうちに小さな悲鳴が聞こえた。
「いったー……」
リセリアが慣れないヒールで走り出したのが災いして足を挫いてバランスを崩してしまったのだ。しゃがみ込んだ状態で足首をさするリセリア。
――ふわり。
「え?」
ふいにリセリアの体が浮いて何事かと確認すると、笑顔を浮かべたヴィンツェンツの顔が目に入る。「だから言ったのに」とでも言っているような優しい笑顔。ヴィンツェンツがリセリアを抱き上げていたのだ。
「はぅぅ……失敗しちゃった。でも、えへへ、ちょっと嬉しい、かな」
足を挫いてしまった事を少し恥ずかしそうに、そしてヴィンツェンツに抱きかかえられている事に嬉しそうに頬を染めてぎゅっと抱きついた。
ここぞとばかりに楽しそうな笑顔を浮かべた貴公子は姫に問いかける。
「さて、どこに行こうか。 My Lady」