■リヴァイアサン大祭2012『天と天鏡の狭間、光の降る中で』
この地方では、毎年この日だけ不思議な現象が起こる。真っ白な雪の中に星霊リヴァイアサンが大空を舞うのを見られる地方もある。
しかし、金色に輝く砂が降るのはこのラッドシティだけ。そんな幻想的な光景の静かな湖。
「綺麗ですね」
湖面に浮かび静止している小船から幸せそうな声が響いた。
愛しい恋人――リョウに寄り添い、腕を絡めるソフィア。
「去年見た光景と同じはず……ですが、貴方と一緒に見ると初めての光景のように違って見えます」
そのまま自分の頭を静かにリョウの肩に乗せる。
リョウはソフィアからプレゼントされた長いマフラーを取り出した。片方を長くしてソフィアにそっと巻いてやり、ソフィアに巻いてもまだ長いマフラーを自分に巻く。
「寒くないか?」
「有難う御座います。大丈夫ですよ」
リョウが優しく問い掛けると、ソフィアがにこっと柔らかく微笑んだ。顔に当たる風は冷たいが、寄り添い触れ合う肌は心地良い温もりを伝えてくれるから。
2人はお互いの温もりを感じ合い、金色の砂が舞う夜空を見上げる。
「夜の黒と砂の金。貴方の色に包まれているよう……」
満たされた気分、とはこういう気持ちを言うのでしょうか、とふいにソフィアが幸せそうにリョウを見つめた。
「とても綺麗な景色だ。ソフィアと一緒に眺められるのが、ただ嬉しい……」
黒いコートを纏い、綺麗な長い金髪を夜風に揺らすリョウは夜空を見上げたまま、ソフィアの肩をぐっと抱き寄せる。
「私も、です……」
急に抱き寄せられて、ソフィアの頬がうっすら染まった。
夜空を見上げたままだったリョウが真っ直ぐソフィアを見つめると、
「この景色と皆をいつまでも護っていこう。……俺の心はいつもソフィアと共に有る。愛しているよ」
力強く告げる。そのままゆっくり顔を近付け、唇を重ねた。そのリョウの背中にそっとソフィアの腕が回される。
「ええ、この美しい景色を、二人で……」
静かに唇が離れると、降り注ぐ金の砂に触れつつソフィアが微笑んだ。
すっとリョウの耳元に唇を近づけたソフィアの唇が静かに動く。
――愛してます、と。