■リヴァイアサン大祭2012『溶けた温もり、心ごと交わって』
――12月の24日。リヴァイアサン大祭の聖なる日に、彼は、心に募り続け秘めた思いを、彼女に告げた。
『結婚してほしい』と。
彼女は驚いたように息を呑み、しかし改めて告白の言葉を噛み締めると、彼の胸元に身を寄せた。
その後、二人は彼の家で改めてお祝いした。甘くてふんわりしたケーキは口を幸せで満たし、飾ってあるツリーを眺めれば、改めて聖夜を実感して二人は顔を綻ばせた。
二人で新たに作り上げる幸せの時間。
けれど、部屋の時計の鐘が鳴り響いた。それは、無常な別れの時間を告げる音色だった。
「……リシャ、もうこんな時間だ。送ってくから」
セツナは少し寂しそうな顔を浮かべたものの、すぐに微笑みで取り繕って手を差し伸べた。別れの時間なのだから仕方がないのだけれど、それでも切なさがセツナの胸の中で渦巻いた。
するとリシャは、両手でセツナの服の裾をぎゅっと掴んで引っ張ってきた。その小さな手からセツナを放したくないと強い願いが感じられた。
「もうちょっと……一緒にいても、いい?」
彼女のその言葉に、セツナは小さく頷いた。
セツナは心の奥で強く歓喜していた。別れの時間をリシャが拒んだことと、そうしてでも一緒に居たいとねだったことに。
するとセツナはベッドに彼女を迎えると、まず先に自分からベッドに腰掛けると、そのまま手招きした。
ベッドのある部屋は薄暗く、窓からは牡丹雪が見える程度で、部屋の灯りが部屋をささやかに照らす程度だった。
リシャは、勇気を振り絞った精一杯のお願いを受け入れて貰えて、のぼせ上がりそうな心持ちだった。セツナに招かれるままに、彼の膝の間にちょこんと座り込むと、後ろからぎゅっと抱きしめられた。セツナの感触を全身で受け止めると、最初は少しだけ体を緊張させたけれど、すぐに彼の温かさを感じてそのまま優しさに身を委ねた。
それからリシャは自分を包み込むセツナの腕に自らの手を添えて言った。
「今まで一番、セツナくんを近くに感じるね。あったかい」
「リシャ……!」
セツナはリシャを抱き留める腕に更に力をこめた。絶対にリシャを放すものか。
彼女の存在を確かめるようにセツナは彼女の名前を呼び続けた。これは夢なんかではない。
リシャが重ねた手をとると、そのまま一緒に倒れこんでベッドに体を沈ませた。互いに向かい合わせに寝転んで、セツナはリシャを求め、リシャもセツナを求めて抱きしめた。
触れ合う度に愛しさが募っていく。
人を心から愛するとは、こういうことなのか。抑えないと求める心が押し寄せてくるようで、そして止まらなくなってしまいそう。
「俺、リシャのこと、離してやれない」
「セツナくん。わたしだって、離れたくない。いえ、離したくない」
そのまま惹かれあうように二人は唇を重ね、口腔で熱いものを交わした。
これがセツナの、リシャの思いなのだろうか、と。
――どうか、このまま永遠になれますように。