■リヴァイアサン大祭2012『雪の降る街角にて』
冷たい風が吹く街。一年に一度の特別な日、リヴァイアサン大祭にエルフヘイムを訪れたルーンは義妹のデイジーと共に祭りの賑わいを楽しみ、二人で買い物をして歩いていた。
様々な商店が並び、ちらりらりと白い雪が舞う。
特別な日ではあるが、二人ともとくにおめかしはしていない。デイジーは赤い服に銀の胸当て、桃色の髪には服に合わせたような可憐な赤い花飾り、ルーンは風渡る青空のような青い髪と、同じ色の騎士服と白いマント。
普段通りの恰好で、華やかな祝いの雰囲気に満ちた街を普段通りの会話をしながら歩き、買い物をする。それも特別な日ならばかけがえの無い時間で。
気に入った物、美味しい物。そんなプレゼントの数々を抱えて歩くルーンの目の前を軽い足取りで進んでいくデイジーは、ふと義兄を振り返り声を掛けた。
「ルーンお兄ちゃん、大丈夫?」
ルーンはバランスを崩して大事なプレゼントを落として台無しにしてしまわないように注意しながら笑顔で答えた。
「あはは……大丈夫ですよ」
守るべき義妹に心配され苦笑しつつも、決して悪い気はしない。
デイジーはルーンの志を理解し、守られていると思ってくれているからこそ先だって背を向けて歩くのかもしれない。それでも気にしているからこうして振り返る。
そして歩調を合わせる。
「こうやって並んで歩くのも良いですね」
「そうだねー。いつもは探索の時が多いかな?」
ルーンはそんなデイジーを守りたいと願い、普段の探索では共に行動をし、お互いに背中を預けて戦う間柄でもあるので、たまにこんなふうに気ままな散策をするとその楽しさの中に穏やかな幸せを発見する。
これからもこんなふうに一緒に戦ったり生活したりして過ごしていくのだろう。
「これからも共に行動をしてくださいますか?」
そんなふうに考えるとルーンの口からは自然とそんな言葉が出た。
デイジーのオレンジの瞳がにこりと微笑む。
「うん、もちろんだよ。ちゃんと守ってね?」
「それこそ、もちろんですよ」
信じている。
信じて欲しい。
雪の降る街道を小走りで駆け出したデイジーは、ぴたりと立ち止まるとルーンの方を振り返り、改めて気持ちを伝えた。
「ルーンお兄ちゃん、これからもよろしくね」
「はい、こちらこそ」
ルーンも微笑みながらそう答えた。
その笑顔に、明るさに、本当に守られているのは自分かもしれない、とルーンは思う。
そんな思いを胸に、これからも守り続けると心に誓う。