■リヴァイアサン大祭2012『聖夜の誓い』
とても、とても静かな夜だ。ティルナとレイラの二人にとって、この日はかけがえのない記念日となる。数本のキャンドルが照らすだけの薄暗い部屋の中……明るいパーティー会場でわいわいと騒ぐのも悪くないが、静寂に包まれて二人だけの結婚式を挙げる荘厳さには、また違った魅力がある。なんとなく、互いのウェディングドレス姿が映える気がする。
ティルナを見つめるレイラの顔は赤い。照れと緊張が、目に見えてわかる。
(「こうしてティルナのドレス姿を見ていると、なんだか夢でも見ているような感じです」)
そのレイラを安心させるように手を取るティルナ。彼女の表情には余裕すら感じられるが、決してそうではない。本当は抑えきれない想いと緊張で今にも心臓が破裂しそうだった。
レイラの手を抱くように自分の胸に押し当てて自分の想いを伝えた日を思い出す。
(「最初は私の方から告白したのよね。あの時も確かリヴァイアサン大祭が近くて……あれからもう2年。とうとう、この日が来たのね」)
最高の時間が思い起こされる。この日までの時間は随分と長かったような気もするし、ひどく短かったような気もする。
しかし、思い出に浸るのは後で良い……今目の前に、一番美しいと思える彼女がいるのだから。
「ティルナ、綺麗です…目を奪われるって、こういうことなんですね」
「レイラも、すごく素敵よ。このままずっと時間を止めていたいくらいに……」
薄っぺらな賛辞のような無粋なものではない、互いの偽り無い言葉。ごく自然に、二人の指が絡み合う。レイラは息がかかるくらいの距離でティルナを見つめ幸せそうに微笑んだあと、そっと目を閉じる。
愛おしい。この想いはきっと、二度と消えることは無い……その命が尽きる瞬間まで。
一瞬だけ、目を閉じたレイラを見つめ、唇を重ねる。
「これから、ずっと一緒に……大好きです、ティルナ」
「ええ……いつまでも、どこまでも、これからも二人で。愛しているわ、レイラ」
窓の外に見える世界樹、その上空を泳ぐ星霊リヴァイアサンが、二人を祝福するように見つめた気がした。