■リヴァイアサン大祭2012『消えた七面鳥事件』
テーブルには、乗り切らず溢れんばかりの──いや、既に溢れた、ぱりっと香ばしく焼き上げた飴色の皮の、七面鳥。と、七面鳥。
と、七面鳥。
と。
町中の七面鳥を買占めることすら辞さない勢いで買い集め買い漁り、次から次へとオーブンでせっせと焼き上げた、大祭の成果だ。
「にゃははッ」
ずらり並んだそれらに加えて、キッチンには『妹』と共に作ったご馳走が控えている。
「トコちゃんが手伝ってくれたお蔭でいつもより二品三品、多く作れたよッ♪」
上機嫌のマシロが『妹』を見遣れば、そこには重ね着に重ね着を重ねた、防寒ばっちり、むしろ室内には不要なほどの防寒対策を行ったトコトゥカ。
実に動かしにくそうな腕を広げて、にやと浮かべるのは、道化師の笑みだ。
「オ姉チャン! 今ボクハ モッコモコ デ ヌックヌクデスヨ! 是非トモ オイデナサ〜イ!」
「あ、温いのは間に合ってますんでー」
にこー。
渾身のわがままだったのに、さらりと最高級の笑顔でかわされれば、トコトゥカは唇を尖らせ膨れっ面。
──ああもう、そんなところも可愛い、私の最愛の妹!
「冗談だよトコちゃんッ」
けらり笑ってぎゅっと抱き締めれば、もこもこ装備のお蔭だけじゃない温かさが伝わって、至近距離でふたり、へらり、笑う。
『姉』の悪戯も判っているとばかりに相好を崩すトコトゥカと、改めて料理に向き合って。
「メリー・リヴァイアサン、トコちゃん」
「メリー・リヴァイアサン デスヨ、オ姉チャン」
ちりんと鳴らしたグラスは深い色合いの葡萄ジュース。いざ、七面鳥討伐といこう!
「柔ラカクテ オイシイ デス!」
「ほんと? 良かったー!」
おなかいっぱいに食べたところで、転がるようにしてふたりで、赤い火揺れる暖炉の前へ。
「1年分ノ 七面鳥 食ベマシタネー」
ぱちぱち爆ぜる薪の音を聞きながらトコトゥカが言えば、1年かぁ、とマシロも応じる。
「トコちゃんと出会って……あー、1年と半年以上になるんだねぇ……」
早いなぁ、と思うと同時に、こうして巡り合えた『妹』と、まだそれだけしか過ごしていなかったことに、少し、驚く。
ねね、と呼べば、黄金色の瞳が『姉』を捉える。
「お姉ちゃんに付き合ってくれて、ありがと♪ これからもヨロシクねッ♪」
にっこり笑って共の道を願えば、『妹』は曇りない微笑みを彼女に返した。
「ズット ゴ一緒 シマスヨ!」